2018年5月20日日曜日

H30年度「西洋美術史実地研修1」

美学美術史学科では、前期と後期にそれぞれ「西洋美術史実地研修1」「西洋美術史実地研修2」の授業を行い、主に都内の美術館・博物館で企画展・常設展を見、実地に作品を学びます。この授業は学芸員資格を習得するために必修の「博物館学実習1」の授業でもあるので、多様な博物館施設の在り方や展示の方法なども同時に学ぶことになります。

平成30年度第1回目は4月中旬に行われました。
午前には六本木の国立新美術館で「至上の印象派展―ビュールレ・コレクション展」

スイスの実業家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956年)が集めた絵画作品の中から、印象派とポスト印象派の作品を中心に64点が選ばれて、展示されています。




入館前に、事前に用意したレポートに沿って作品や画家について発表します。

まずは、ルノワール作品とともに本展のポスターでもおなじみの《赤いチョッキの少年》を描いたポール・セザンヌについて学びます。

ポスト印象主義の画家であるセザンヌは対象をすべて幾何学に還元して描くという手法から20世紀初頭に登場するキュビスムに影響を与えたと言われています。

本展では、ピカソやブラックらによるキュビスムの作品、また同時期の美術運動であるフォービスムの画家たちの作品を見ることもできます。そこで、もう一つの事前課題は「フォービスム」について。
あまり聞き慣れない美術運動かもしれませんが、予習した上で作品を見れば、制作意図を考えるヒントになるでしょう。

博物館学の授業としての履修者には「独自コレクションをもたない美術館について」調べ、考えてきてもらいました。
博物館施設の目的は収集と保管ですが、国立新美術館のようにコレクションを持たない美術館はドイツ語でクンストハレと呼ばれ、欧米では自由に斬新な活動を行える美術館として意義を持つとされています。

さて、予習を終えたら、展示室へ。
展覧会タイトルでは印象派作品ばかりのようですが、印象派以前の19世紀の巨匠たちの作品を見ることもできました。特にロマン主義の画家ドラクロワは晩年に色彩の研究をしており、印象派の画家たちにも大きな影響を与えています。

19世紀から20世紀初頭までのフランス美術の代表的な画家たちの作品を見て、展示室最後の部屋は本展の目玉作品であるモネの《睡蓮の池、緑の反映》

モネは数多く「睡蓮」をモチーフに描いていますが、1920/26年頃に描かれた本作は20世紀に入ってから彼の集大成であるオランジュリーの連作にも繋がる大作です。

午前中はビュールレという個人のコレクションから集められた秀作を見ましたが、午後は一人の画家に焦点を当てた展覧会です。東京、丸の内にある三菱一号館で「ルドンー秘密の花園展」を見ました。

ここでもまずは事前学習の成果を発表。「オディロン・ルドンについて」と彼が使った版画技法「リトグラフについて」予習します。





象徴主義の画家オディロン・ルドン(1840-1916年)はセザンヌ(1839-1906)と同時代人です。 初期には幻想的で詩的で、時にグロテスクな世界を版画で表現していましたが、1890年代頃からはパステルや油彩による色彩豊かな作品を手がけはじめます。
そこには、午前中にビュールレ・コレクション展で見たドラクロワの影響が指摘されています。
 今回の展示の目玉は、三菱一号館が所蔵する巨大なパステル画「グラン・ブーケ」とともに、ルドンがドムシー男爵の城館の食堂装飾として描いた壁画が、当時の食堂での配置を再構成した形で再現展示されていることです。
http://mimt.jp/redon/midokoro_04.html
 (こちらはコピーを使った再現)
 19世紀末から20世紀初頭というのは「装飾」に芸術家の関心が向かい、巨大な壁画の注文も増えた時代です。モネの「睡蓮」も実はそうした動きの中で描かれたと考えると、また違って見えるかもしれません。






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