2018年10月31日水曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)デザイナーの岩崎一博先生が御講義

リレー講座の第3回(2018.10.23)は、デザイナーの
岩崎一博先生にお越しいただきました。


岩崎先生は、グラフィックデザインを軸に、ミシンを使った3人組アートユニット「Nu Amu Misin ?」(ヌウアムミシン)のメンバーとしても活躍中です。
今年はユニット結成20周年にあたるそうです。



「ヌウアムさん」で親しまれる「Nu Amu Misin ?」では、NHK子ども向け番組「いないいないばあっ!」の舞台美術を制作しています。
先生が教室の皆に訊ねてみると、参加者のほとんどがこの番組を見ていました。子どもにも大人にも愛されてきた長寿番組です。

「空間」「グラフィックデザイン」「テキスタイル」をキーワードに

今回のご講義では、ユニット名誕生の物語や作品紹介、またNHKとの最初のお仕事「あいうえお」(小学校1年生向け教育番組)の衣装制作につづいて、「いないいないばあっ!」の舞台美術について制作過程のお話をじっくりとうかがいました。

影をモチーフにした作品

「あいうえお」の「まかふしぎさん」衣装デザイン


「いないいないばあっ!」の制作過程を見せていただきながら、先生のウィット溢れる「舞台裏」のお話に、笑い声や楽しげなひそひそ話で教室が盛り上がりました。

毛糸や布、紙の素材とさまざまな色、そしてステッチが作り出す、あたたかで不思議な世界。
多くの人たちが携わってできあがった舞台空間に遊ぶ幼い子どもたち。

子ども向けのテレビ番組は、何よりも安全性が重視されるとのことで、舞台美術ひとつひとつに細やかな配慮があることも知りました。

新たな観点で「いないいないばあっ!」にまた出会えそうです。

岩崎先生、ご講義をどうもありがとうございました。


Nu Amu Misin ? ブログ http://nuamumisin.blogspot.com/

NHK Eテレ「いないいないばあっ!」ウェブサイト
http://www.nhk.or.jp/kids/program/inaiinai.html

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平成30年度「芸術の現場から」
10月~来年1月 火曜16:20~17:50 群馬県立女子大学 新館1階第1講義室にて
スケジュールはこちらをご覧ください。
https://www.gpwu.ac.jp/dep/lit/art/2017.html

2018年10月28日日曜日

西洋美術史実地研修2(第2回)に行ってきました!

秋晴れの気持ちのよい朝で始まりました、第2回実地研修。
今回は地元、群馬の森へ。

群馬県立歴史博物館

最初に訪れたのは、群馬県立歴史博物館。
「西洋美術史の授業でなぜ?」という疑問が湧くかもしれませんが、自分たちの大学がある群馬の歴史を知ってこそ、グローバルな視点もさらに養えるといえます。

事前学習の発表風景

事前学習の発表では、特別に会議室を貸してくださいました。
お蔭さまで落ち着いて発表を聴くことができたばかりでなく、施設見学の勉強にもなりました。

学習課題は、富岡製糸場の設立と建物(特に西欧との関わり)について。
世界遺産に登録されている富岡製糸場は、明治5(1872)年にフランス式の技術で設立された官営工場です。その2年前には、前橋藩がイタリアで製糸業の経験を積んだスイス人技師を指導者に製糸所を設立しています。群馬で生産された生糸が輸出されていきました。

イタリアの初代駐日公使が群馬へ養蚕の視察に訪れたこともありましたし、また群馬からイタリアへ視察に行ったり、蚕種(蚕の卵)の直接販売に向かったりする人たちもいました。そこには蚕糸がつなぐ人と人の交流がありました。

解説員のガイドで見学スタート
富岡製糸場の模型を前に

常設展見学では、解説員の方の説明を受けながら、古代から現代までの群馬を通覧。
群馬の歴史や展示を見るポイントを教えていただきました。

昭和の体験コーナー

常設展の後は、企画展「上毛かるたの世界」展を見学しました。
「上毛かるた」は、戦後の復興と子どもたちに郷土に対する誇りと愛情をもってもらうことを願って作られた群馬のかるたで、県民に親しみ愛されてきました。
展示を見ていると、絵札の原画や読み札の文言につまった思いが伝わります。

「上毛かるたの世界」展 2018年10月6日(土)~12月9日(日)
博物館企画展ウェブページ http://grekisi.pref.gunma.jp/97exhibition.html

群馬県立近代美術館

午後は、隣接する群馬県立近代美術館へ。

岡部館長と稲葉副館長が温かく迎えてくださいました。
館長室にもお招きいただき、感激と緊張でいっぱいになりました。



ザッキンの彫刻の前で館長ご講義

館長から美術館やコレクション、開催中の展覧会「サラ・ベルナールの世界展」についてお話を賜りました。

館長には、本学授業「芸術の現場から」でご講義をしていただいたばかりです。(「芸術の現場から」ブログ  https://kenjo-bigaku.blogspot.com/2018/10/blog-post_25.html?spref=tw

本学教務係長でいらしたことのある副館長からは、愛情のこもった喝が入り、学生・教員ともに思わず身が引き締まりました。



事前学習の発表風景

事前学習は、サラ・ベルナール、世紀末美術、印象派について。
企画展と美術館コレクションの両方について下調べをしてきました。

サラ・ベルナールのポーズをとって

サラ・ベルナールといえば、19世紀末アール・ヌーヴォを代表する画家ミュシャのポスター《ジスモンダ》を思い浮かべる人も多いかもしれません。ベル・エポック時代のフランスで大活躍した舞台女優です。自ら作品を制作する彫刻家としての一面もありました。

この展覧会では、ミュシャなどの作品というよりも、人物そのものに照明を当てています。
作品を通してのサラ・ベルナールではなく、今度は作品が彼女を取り巻くひとつひとつの物になっていくのです。絵の登場人物が実体化する瞬間を味わいました。

「サラ・ベルナールの世界展」 2018年9月15日(土)~11月1日(日)
美術館企画展ウェブページ http://mmag.pref.gunma.jp/exhibition/index.htm

群馬の森で散歩する人たち、元気よく遊ぶ子どもたち。のどかで充実した一日でした。

群馬の森とシャボン玉

今回は学生がくれた一枚の写真で締めたいと思います。
それでは、来月またお会いしましょう。

2018年10月25日木曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業) 群馬近美館長が御講義

リレー講座第2回(2018.10.16)は、群馬県立近代美術館館長の
岡部昌幸先生にお越しいただきました。


岡部先生は、帝京大学大学院文学研究科日本史・文化財学専攻教授でもあります。
そこで美術館と大学、両方に携わるお立場からのご講義となりました。

授業は「学びの場とは何か」という問いかけから始まりました。大学の起源のお話などをうかがいながら、大学の在り方や自身の学びについて考え直す機会となりました。


また、横浜美術館の設立や東京ステーションギャラリー、東京都庭園美術館の運営のご経験について、学芸員秘話をまじえて話してくださいました。

日本の美術館の特徴と素晴らしさは、設立背景のほとんどがトップダウン型ではなく、現場で草の根的に始まっていること。特に1980年代、1990年代に現場が美術館をつくってきたこと。

その時期に学芸員として活躍していた方の、まさに日本の美術館の歴史の証言です。
「芸術に上下はあるのか?」と問いかけ、理由づけしていくのが学芸員の仕事でもあると学芸員の誇りを伝えてくださいました。

群馬県立近代美術館の写真を背景に

群馬県立近代美術館は、地域に関わる、地域の美術館。「ゆかり作家」の収集・企画展も行っている。

美術館とは、ふと思い立って行くところ。群馬の森にある近美は、樹木の下で授業をしていた古代ギリシャの哲学者プラトンの学園を思わせる。美術館でも大学でも、すべて情報や知識は人間から人間へと伝わっていく。

美術館の仕事は、誰かに役に立っている、職員全員にとってやりがいのある仕事。

館長の仕事は「たすけてください」ということ。人・予算・作品を、楽しみをもって増やしていきたい。

そんな言葉が印象的でした。

また、24時間教育者でありたいと語るお姿に、学びに関わる皆が心を動かされたのではないでしょうか。

本学から距離的に近い「近美」にさらに親近感をおぼえました。

岡部先生の「理想の美術館」が実現する日を心待ちにしています。

ご講義をどうもありがとうございました。

*現在、群馬県立近代美術館では、岡部館長監修の「サラ・ベルナールの世界展」が開催中です。
2018年9月15日(土)~11月1日(日)
美術館ウェブページ http://mmag.pref.gunma.jp/exhibition/index.htm

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平成30年度「芸術の現場から」
10月~来年1月 火曜16:20~17:50 群馬県立女子大学 新館1階第1講義室にて
スケジュールはこちらをご覧ください。
https://www.gpwu.ac.jp/dep/lit/art/2017.html



2018年10月18日木曜日

県民公開授業「芸術の現場から」  (リレー講座)が始まりました!

本授業は、美学美術史学科が担当する教養教育科目「芸術プログラム」のひとつで、県民の皆さまが自由に聴講できる県民公開授業にもなっています。
芸術分野で活躍する、また群馬にゆかりのあるアート関係者を講師として、それぞれの現場の話題やご自身の体験談をうかがいながら、その魅力にふれていきます。

リレー講座第1回(2018.10.9)は、
シネマテークたかさき総支配人、高崎映画祭プロデューサーの
志尾睦子先生にお越しいただきました。


先生は本学の美学美術史学科卒業生、大学院芸術学専攻修了生です。在学中に高崎映画祭のボランティアスタッフとして参加したことがこの道へ進むきっかけとなりました。


高崎市内の映画館や高崎映画祭の歴史、日本の映画館の現状、NPO法人たかさきコミュニティシネマの設立や運営方法、シネマテークたかさき運営までの経緯、高崎フィルム・コミッションの特徴、また映画の活動と地域活性化とのかかわりについてなど、多岐にわたってお話してくださいました。


「映画は文化。まちをつくることは経済・文化・創造の活動。そして、映画をつくることは人をつなげること」と語る志尾先生。

地域に密接な芸術文化の活動について多くの面から学び、考える機会をいただきました。

志尾先生、ご講義をどうもありがとうございました。

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平成30年度「芸術の現場から」
10月~来年1月 火曜16:20~17:50 群馬県立女子大学 新館1階第1講義室にて
スケジュールはこちらをご覧ください。

2018年10月9日火曜日

後期授業「西洋美術史実地研修2」が始まりました!

「西洋美術史実地研修2」は、美学美術史学科の専門科目として、また、学芸員課程の実習科目として、東京や群馬等の美術館や展覧会を見学する授業です。
作品を実際に鑑賞でき、展示方法等を学べるまたとない機会です。
これから4回にわたって実施報告をしていきます。

台風の影響が心配された第1回研修日の朝。
前日までの雨はすっかり上がり、まばゆい光に緑がきらめいていました。
午前中は、国立新美術館で「ピエール・ボナール展」を見学。


頭の丸みが印象的な女性と白い猫が出迎えてくれました。

フランスの画家ボナール(1867-1947年)は、「日本かぶれのナビ」と呼ばれたというけれど、どんな絵を描いていたのでしょう?そもそも「ナビ」って何でしょう?

事前学習の発表風景。

この展覧会は、オルセー美術館特別企画によるもの。
ボナールとナビ派、そして美術館についても調べておきました。

「いざ、『視神経の冒険』へ」

ボナールが誕生した1867年には、パリで万国博覧会が開催され、日本も参加しました。フランスの画家たちは、浮世絵や焼き物など日本の美術に大きな関心を寄せました。日本にとっては、江戸から明治へと変わる激動の時代でした。それから約20年後、ボナールは、ポスト印象派の画家ゴーギャンや日本美術の影響を受けた画家たち「ナビ派」のメンバーとして制作に取り組んでいました。「ナビ」とは、ヘブライ語で「預言者」を意味する言葉です。

この展覧会では、日本美術の影響が強い平坦で装飾性の高いパネルから、独自の表現を求めた光と色彩の裸婦画まで、また静物画や風景画、スケッチ、写真といった多くの作品が並び、80年の歳月を生きた画家の関心の幅広さや画風の変遷を学ぶことができました。

午後は、東京都庭園美術館で 「エキゾチック×モダン アール・デコと異境への眼差し」を見学。

旧朝香宮邸を背景に。

アール・デコの館は装飾の宝庫。
壁や天井、時には床も、そして扉や窓、階段、照明-すべてがアール・デコを体験させてくれます。

事前学習の発表風景。

アール・ヌーヴォとアール・デコ、旧朝香宮邸と東京都庭園美術館について調べました。

さて、建物の中へ。
玄関のガラス・レリーフの翼を広げる女性たちに挨拶をして大広間に入ったとたん、展覧会の異空間に放り込まれました。

エキゾチックとは、誰にとってのものなのか。
異境とはいったいどこなのか。そこから何が生まれたのか。

新館入口のガラス越しに見える庭園。

群馬県立館林美術館蔵のポンポンの動物彫刻たちに東京で出会いました。
来年1月22日~3月31日、同館でもこの展覧会が開催されます。
http://www.gmat.pref.gunma.jp/ex/ex_next.html


それでは、次回またお会いしましょう。