2024年5月28日火曜日

5月20日「芸術の現場から」画家 山口晃先生

5回目の「芸術の現場から」のゲスト講師は画家の山口晃先生をお招きしました。

群馬県桐生市出身の先生は、高校まで群馬で過ごしたこともあり、本県にゆかりのある現代美術のスターともいえます。「アートマネジメント特講3」の非常勤講師、杉浦幹男先生のご尽力もあり、本学にお越し頂くことが叶いました。

そして、今回は県民公開講座ということで、外部の聴講者も多く見込まれたため、講堂に会場を移しての開催となりました。開場時間前から講演を楽しみにしていた一般の方も多くいらっしゃいました。大学院生には受付も手伝っていただきました。

登壇直前まで締め切りの原稿を執筆していた先生でしたが、講義の時間になると壇上を軽やかに動きながら、穏やか優しい口調でお話を始めまてくださいました。

お話の中心は先生の幼少期から大学生くらいのご経験、子どもの時の絵、どういった気持ちで絵を描いていたか、絵を習いに行った先生のこと、同級生の友人について、予備校時代、大学に入って絵に向き合ったこと、そして挫折と苦しんだこと、、、などスライドの画像を指した次には、ホワイトボードに描きながら当時の状況を話すという独自のスタイルで聴衆を飽きさせません。




しかし、ゆるやかなお話の中に、絵に向き合ってきた先生ならではの本質的な部分がキラリと光って現れます。子どもがどのように世界をとらえているのか、人は成長と共にどうして周囲の目を気にし、自身のうちにあるものを表現できないのか、また自身にうそをつかずに描いたものはやはり他者を魅了する作品になっていく・・・など。

 これらの言葉に、大学生の学生たちはずいぶん救われたようです。中学校の美術資料集の表紙で山口先生の作品に出合った学生も多く、「今日先生に直接会えて感激した!」という感想が見られました。また、学生が日々制作に向き合う中で感じる悩みや葛藤についても、先生のお話から突破していく言葉やヒントをたくさんもらうことが出来ました。

講演後には先生に直接質問する姿も多数みられ、学生の質問や(悩み相談?)にも個々に丁寧に対応いただきました。文化情報学科の鈴木先生も長らくファンであるということで駆けつけてくださいました。先生、貴重なお話をありがとうございました。

最後に、先生のお招きにあたり、ミヅマアートギャリーの長田様に大変お世話になりました。ここでも深く感謝申し上げます。

 

先生の作品は現在群馬県内の美術館で観ることが出来ます。ぜひ足をお運びください。

群馬県立館林美術館「シンフォニー・オブ・アート イメージと素材の饗宴」

  2024623日(日)まで


大川美術館THE 日本画 ―日本画らしさとは 大川美術館のコレクションを中心に」

2024630日(日)まで


また、東京では以下でもご覧になれます。

山種美術館「犬派?猫派?」

20247/7() まで


 

写真/渡辺典子先生(英米文化学科)*最後の写真は美学美術史学科教員撮影


2024年5月9日木曜日

2024年度「芸術の現場から」 プロジェクトコーディネーターの竹丸草子先生によるご講義

5月6日は、本学卒業生でプロジェクトコーディネーターの竹丸草子先生(アーツカウンシル東京 事業部事業調整課 社会共生政策担当係長)にお越しいただきました。
美術教育、アートプロジェクト分野でのコーディネート論がご専門です。

ご講義は「アートと人々が交わる場のコーディネート アーティストワークショップ実践現場から考える」と題して、コーディネーターの定義づけとともに、具体的なワークショップの事例を紹介してくださいました。

竹丸先生は、コーディネートの概念である「各部を調整し、全体をまとめること」に、新たに「つくる 場をつくる/関係性をつくる」ことを追加して、従来の概念を拡張し、「場づくりのコーディネート」を提唱しています。
そこで、コーディネーターとは、「場を開き、場づくりによって、人とその人自身の外部との関係性を構築する人」であると定義づけます。

続けて、実践例を2つ紹介してくださいました。1つめは、彫刻家と子どもたちとをつなぐ「触覚による鑑賞ワークショップ」です。事前の周到な打合せを経て実施したワークショップでは、竹丸先生がファシリテーターとなって鑑賞への導入役を果たします。
子どもたちは、彫刻を触って自分で発見したことを他の子どもたちと共有するようになり、さらに彫刻家と対話することで制作の思考や態度をも共有していきました。

実践例の2つめは、福祉事務所でのアートプロジェクトです。ダンスや「ひみつ基地づくり」のワークショップによって、利用者たちの普段とは異なる反応を知ることで、職員たちの支援に関する考え方までもが変わるということが起きました。
これによって「アートを介した関係性の再構築」がなされました。

竹丸先生は、アートプロジェクトのコーディネーターは「そこにいる人々が自分らしさや専門性を発揮できるよう、働きかけ」、関わるすべての人々が「芸術的知性」によって創造的に、自分らしく生きるための「場づくり」をしているのだと解説します。


竹丸先生のご講義を聴講して、学生たちは、コーディネーターという専門家と、アートへの多様な関わり方についての知見が高まったようです。
竹丸先生、どうもありがとうございました。