2023年7月12日水曜日

「芸術の現場から」 7月3日 松本美枝子先生





「芸術の現場から」の講義では、73日(日)に現代アーティストの松本美枝子さんをお迎えしました。

 

松本先生は、茨城県常陸太田市を拠点に、さまざまなアーティストインレジデンスにもご参加されつつ、制作活動をされています。

実践女子大学文学部美学美術史学科をご卒業後、学芸員、写真家、そしてアーティストとしてさまざまな仕方で芸術にかかわるお仕事をされてきました。

昨年は、国際芸術センター青森にて個展「具にみる」を開催。

地元では「メゾン・ケンポク」を運営され、アートを地域に開く活動をされています。

現在は、トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)のアーティストインレジデンスにてリサーチ活動をされている最中で、都市における自然環境のありかたについて河川をベースとして考察されています。

 

松本先生のご講義では、大学生の頃から現在までのさまざまな活動や、そのなかで生まれた作品・プロジェクトについてお話しいただきました。

 

大学を卒業したあと、まずは学芸員としてご活躍された松本さん。

お仕事とご自身の制作を両立させながら、やがて写真家として独立されました。「写真」と一口に言っても、商業写真から現代芸術の文脈へと、幅広いお仕事をされてきた松本さん。

大学進学後の進路を考える学生たちにとっても、芸術と関わりながら社会のなかで生きていくうえで参考になる、いろいろなイメージが見えてきたということが、授業後の感想を通じて伝わってきました。

 

松本さんは、地質のような一見すると「自然」と思われるようなものもまた人間の社会や産業と関わりあっていることを静かに明らかにしていく作品を制作されています。

またそれらの作品を、さまざまな芸術祭などで展示されてきました。写真をベースとするアートの可能性、また写真家の仕事についてよく知らなかったけれど、松本さんのご講義を通じてわかるようになったという学生たちの感想もありました。

またメゾン・ケンポクをはじめとする地域とアートの関わりについても積極的に取り組まれていることにも関心を持った学生が多くいたようです。

 

最後の質疑応答でも、カメラに関する質問や、制作と仕事の両立、また制作を続けていくうえでの工夫など、活発なやり取りができ、大変有意義な時間となりました。

 

松本先生、素敵なご講義、本当にありがとうございました。

2023年6月22日木曜日

「アートマネジメント特講1」の授業で玉村町文化センターに見学に行きました

 6月15日の授業時間に29名の学生が玉村町文化センターに見学に行きました。

この授業では文化施設の運営やマネジメントも取り上げていますが、
大学内の講義のみではやはり見えにくい部分もたくさんあります。
そこで昨年より授業でセンターにお邪魔して、
運営の実際や、照明、音響体験をプロのスタッフの方から
教えていただいています。
この日は3班に分かれ、ホールを見学させていただきました。
まずはホール全体のお話を伺い、施設管理や事業について教えていただきました。
その後、舞台裏、照明、音響と順番に回り、
普段は見れない、触れない舞台の裏側を少し見せていただきました。
音響体験では数名の学生がマイクを通して自身の声を
美しくホールに届けてくれることに感動!
スピーカーからどうやって音が流れるのかなどもなるほどという場面が多かったです。
照明体験では照明の色はどうやって作られているのか、
実物を見せてもらいながらお話を聞くことで、理解が進みました。

舞台の裏で感動を届けるお仕事に触れ、
最後の質疑応答では活発に質問が飛び交っていました。

貴重な体験をお忙しい中ありがとうございます。
これからも最も近い文化ホールですので
いろいろなかたちで関われるといいですね!

2023年6月5日月曜日

「芸術の現場から」 5月29日 向田陽佳先生

「芸術の現場から」6回目となる講師は、根付師の向田陽佳先生をお迎えしました。

向田先生は、横浜国立大学教育学部美術科書道専攻を卒業、資生堂宣伝部で勤務されたのち、根付師として活動されています。たばこと塩の博物館「現代根付展」出品、「第一回現代木彫根付公募展」最優秀賞を受賞、「向田陽佳―根付と小さきものたちー」日本橋三越本店美術サロンにて個展、東京国立博物館、公益財団法人 京都清宗根付館、高円宮家所蔵多数など、作品が収蔵されています。
現在は、国際根付彫刻会 会長も務められています。

ご講義の前半は、「根付概論」の配布資料をもとに進められました。

そもそも根付とは?
初めて聞く履修生もいるかもしれません。

まずは、どんなものなのか、どういう用途で使われているのか、その辺りからスタートしました。
明治以前、男女を問わず「着物」を着ていた日本の文化、洋服と違ってポケットがない「着物」、何かを持ち歩くためには、物が入った巾着袋を手に持つか、腰に結んだ帯に提げるかなど、限られた手段しかありませんでした。
そこで生まれた実用品、帯に固定するための“ 留め具 ”が「根付」。

どの時代から?
根付の歴史を江戸時代中期に描かれた風俗図絵や浮世絵などから説明。帯の形状が時代とともに変化していく過程で、実用的な部分を重視しながら、だんだんと凝った細工を施すように。
“使って楽しむ”、“見せて楽しむ”お洒落アイテムの地位を確立していったことを話されました。

講義の中盤では、根付の特徴や種類、また実際にどのような工程で制作していくのかなどスライドを見ながら説明していただきました。
特徴としては、紐を通す穴があいていること、腰につけて邪魔にならず、手のひらに収まる程度の大きさであること、様々な角度から見ても彫刻や細工が施されていることなど。

根付の種類も幅広く、形彫(かたぼり)根付、饅頭(まんじゅう)根付、鏡蓋(かがみぶた)、差(さし)根付、帯はさみ根付、透かし彫り根付、面(めん)根付、等々、細かい形態に分類するとまだまだ種類があげられるようです。
いかに人と違うものを身につけるか、そこに江戸時代の人は粋を感じていたのかもしれません。

言葉遊びも好きな向田先生、完成度の高さに加え、「ひねり」を作品に込められているそうです。硯の作品の例は、履修生にも大変響いたようです。
極小の中で生み出される圧倒的な超絶技巧、それを支えるのは手に馴染んだ道具。師事をされた先生のもと、左刃(ひだりば)という特殊な彫刻刀は向田先生の自作。見たこともないような刃の形ばかり。
ヤスリも天然のトクサなどを使ったり、染料も自ら抽出しているとのこと。時間をかけて制作することの大切さや、金工、漆、染織、陶芸など、工芸の世界に共通した道具の大切さが伝わってきました。

そして後半は、資生堂宣伝部時代のお仕事の紹介や根付に興味を持ったきっかけ、根付師になるまでの道筋など、当時の経験を交え話されました。
履修生にとっては、これからの道筋の一つとして、捉えてくれたかもしれません。

ご講義終了後、持参された根付関係の図版などを見ながら、履修生との対話。
学生にとっては、とても有意義な時間となりました。

向田先生、素敵なご講義、ありがとうございました!

◇【 東京国立博物館 本館2階 根付 高円宮コレクション室 】 http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4411

◇【 公益財団法人 京都清宗根付館 】http://www.netsukekan.jp/

向田 陽佳SNS

2023年5月26日金曜日

「芸術の現場から」 5月22日 現代美術家 宮島達男先生にお越しいただきました

 3回目の「芸術の現場から」では現代美術家の宮島達男先生にお越しいただきました。

宮島先生は国際的にもご活躍されている第一線のアーティストです。


今回はいろいろなご縁が重なり、本授業にお越しいただくことが叶いました。

今日のご講義では、前半は先生の作品のご紹介をしていただきました。


既にHP等で予習をしてきた学生たちですが、ご本人から作品のコンセプトや
作品に込めた想いをお聞きすることで、「なるほど、そういうことなのか」と真剣に聞き入っていました。

前半は世界各地に所蔵されている作品のご紹介、2つのソウゾウリョク(想像力と創造力)が人間力ともいえること、現在アメリカで行われている「STEAM教育」には中心に「ART」があることなどポイントを押さえながらお話いただき、アートの役割を考えるきっかけにもなりました。

その後「Art in You」すべての人にはもともとアートが備わっている、すべての人が創造力/想像力を発揮することが出来るというお話もご自身のローカルな場でのプロジェクトなどを交えながらお話してくださいました。

時折哲学者の言葉も紹介され、美学美術史学科をはじめとする本大学の受講生はその言葉にハッとさせられた人も多かったのではないでしょうか。

先生のお話はポイントを押さえていて、1年生や美学以外の学生にもとても分かりやすく、またアートの力を感じ、聴講した4名の教員もじ~~んとしていました。


後半はいよいよ「時の海ー東北」プロジェクトのタイム設定ワークショップです。
これまでも各地で展開してきたワークショップですが、今回は聴講する学生たちが実際にプロジェクトの作品を構成するタイム設定を行いました。

先生からのご説明の後、本プロジェクトのディレクター嘉原さんの進行により、ワークシートにカウントダウンのスピードとコメントを記入していきました。


学生たちはしばらく静まり返り、じっくりとそれぞれ考えていました。

あとで宮島先生が「こんなに静かだったのは初めてだ」とおっしゃったように、真剣そのものの表情でした。

そして、記入し終えた人から、先生に直接シートをわたしに行きます。そこでは短い間ですが、コメントを読み、学生一人一人と対話をしてくださいました。

             みんな並んで提出・・・!青田先生も
一番乗りの杉浦先生!

この交流はきっと一生の思い出になることでしょう。

そして、2027年のプロジェクト作品の完成が楽しみですね。


宮島先生、そして嘉原さん、皆様本日は貴重なご講義とワークショップの体験をありがとうございました。今後のご活躍もお祈りしています。

2023年5月21日日曜日

「芸術の現場から」 5月15日 西島雄志先生

 5月15日 彫刻家でアートカフェ「gallery.studio.cafe_newroll」を主宰されている、

西島雄志先生にお越しいただきました。

先生は中之条ビエンナーレの常連作家で、日本各地で作品展を開催されています。



講義の序盤は、幼少期の美術に関わる体験~大学を受験されるまでの考え方から、
ものづくりと人とのつながりの大切さを分かりやすく丁寧に語ってくださいました。
学生結婚され、様々な仕事をしながらも作品制作を続けてきた姿勢に、学生たちも驚いた様子で聞いていました。
学生時代に恩師からいただいた「作品制作を続けなさい」「必ず助けになる」という言葉が、今の自分に繋がっているとおっしゃっていました。


その言葉の通り、30歳から9年間銀座のギャラリー(使用料は当時1週間で30万円ほど)で個展を開かれています。
その時期に、日常生活「時間」と制作「時間」との関係を考え、いつでも制作できる、銅線を渦のように巻いてパーツを作り組み合わせるスタイルを見つけ出されました。「時間の時間を集めて形にする」というこのスタイルを、現在に至るまで続けています。
そして、常にそのパーツを手に持ち、少しの時間ができた合い間合間に制作をされている話には学生たちも目を丸くしていました。



2021年、東京での講師の仕事を辞め、東京から中之条近くの群馬県吾妻町へ移住されました。
自分自身のやりたいことをやるために自分で責任をとる=仕事を辞めて作品制作のみをすることを選ばれました。
居住地を群馬にされた理由は、中之条ビエンナーレで作品を見ていただいたお客様の言葉の影響があるとのこと。
銀座によくいらっしゃるようなアートに詳しい方達ではなく、素朴で純粋な子供やお年寄りが素直な感想を投げたり、感動してもらえたりすることに本来の作品のあり方が明確になり、救われたとのことでした。



中之条ビエンナーレでは、廃校を舞台にした展示会場や、人が立ち入れない聖域とされている神社などで展示をし、自身が表現したい「気配」を作りやすくなったそうです。
最初自分自身をモチーフにしていた「気配」はやがて動物に変わり、現在は「日本の神」と呼ばれる動物たちをモチーフに展開されています。
群馬だけでなく、京都二条城での展示や海外の展示など幅を広げ、現在、東京銀座ポーラミュージアムアネックスで6月4日まで展覧会をされています。




学生たちの心に響くストレートなコンセプトに、講義最後の質問コーナでは学生からの質問が止まりませんでした。
時間であえなく終了となりましたが、今年度は中之条ビエンナーレ開催年であり、群馬で主宰されているアートカフェギャラリーは今後も開かれるとのことですから、学生たちも伺える機会が増えることでしょう。


ありがとうございました。

2023年5月9日火曜日

5月4日にアートマネジメントゼミ生が大川美術館にてワークショップを行いました

 こどもの日直前の5月4日に、アートマネジメントゼミ生4年生4名が

大川美術館にて「一日限りのこどもびじゅつかん」という企画を実施しました。

この企画は美術館という場を知って、体験してもらう子どもを対象にしたプログラムです。

内容は美術館の作品を鑑賞したあとに、自分で描いた作品を額縁に入れて展示するという

鑑賞活動と表現活動がセットになったものです。

まずは学生から簡単に美術館の紹介と館内のルールを聞きます。
その後館内の作品を鑑賞します。いろいろな作品が展示されていますね。

会場に戻ってきたら、画用紙と画材を選んで自由に表現していきます。
展覧会の作品も見たので皆さんすごい勢いで制作していきます。

完成したら美術館にある額縁に作品を入れます。
そして作者としてギャラリートークを体験!
小さいお子さんは恥ずかしかったり、緊張して自分の作品について
なかなかお話しできませんでしたが、小学生の皆さんはしっかりと描いたものや、
どうしてこれを作ったのかなど話してくれました。

最後はみんなで記念撮影。当日の様子は東京新聞にも掲載されました。

午後も小学生~高校生の方に参加いただき、ゆったりと美術館を楽しむことが出来た
一日でした。ご参加された方、ありがとうございました!

2023年5月3日水曜日

「アートマネジメント特講1」の授業で茨城県近代美術館の「ハロー!ミュージアム」を体験しました

 4月27日(木)の「アートマネジメント特講1」の授業で

今年も茨城県近代美術館の「ハロー!ミュージアム」を体験しました。

遠隔による教育普及事業を体験するということで、オンラインでつながり、

美術館スタッフと交流を楽しみました。


本事業を体験するのは3年目になります。毎回学生は異なる受講者ですが、
このような事業を美術館で行っているということを知ってもらう機会でもあります。
茨城近代美術館は、全国でも珍しく、オンラインでの教育普及事業を展開しています。コロナ禍でうまれた取り組みが、今や遠くの場所にいても美術館を知るツールに
なっていることが分かりました。

学生は担当者(本学の卒業生です!)の優しい受け答えと、楽しい発言に、リラックスした様子でクイズや作品鑑賞を楽しんでいました。今年もモネの作品をオンラインならではの
方法で鑑賞し、新たな視点を得ることが出来たようです。


最後は恒例の質問タイム。
大学生らしい質問もたくさん飛び出しました。
本学の卒業生が活躍されているということもわかり、意欲が高まったようです。
今年もありがとうございました!