2023年7月24日月曜日

2023年度「芸術の現場から」佐藤麻理子先生(朝日新聞社)によるご講義


7月17日は、佐藤麻理子先生(朝日新聞社メディア事業本部文化事業1部)にお越しいただきました。
佐藤先生は、本学文学部美学美術史学科の卒業生です。
 

ご講義は「メディアと展覧会」と題し、展覧会の企画から開催まで、さらに開催期間において、メディアがどのような役割を果たしているのか、東京都美術館で開催中の「マティス展」を中心に詳しく解説してくださいました。
 
展覧会ポスターやチラシを眺める時には、作品やデザインに意識が傾きがちですが、「主催」「後援」「協賛」「協力」の記載箇所に注目することで、どのような、また、いかに多くの機関が1つの展覧会に関わっているのかが見えてきます。


展覧会は、企画立案の要件やスケジュール管理、予算執行といった現実的な問題への適切な対処に裏打ちされて実現していきます。


最後に、今後の抱負として「これまでの経験、つちかってきた歴史を大切にすること、新しいことにチャレンジすること」「プロフェッショナルであること」「良質な企画を作ること」を語ってくださいました。

展覧会の作り方には様々なものがありますが、今回のご講義を通じて、メディアが企画運営に関わることで、大規模な展覧会が可能となり、芸術文化への興味や関心が社会に広まる効果も生まれるということを学生たちも再認識したのではないでしょうか。

佐藤先生、貴重なお話をありがとうございました。

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マティス展 HENRI MATISSE: The Path to Color

東京都美術館公式サイト「マティス展」2023年4月27日(木)~8月20日(日)

2023年7月18日火曜日

7月16日にオープンキャンパスが開かれました

 7月16日(日)猛暑の中、今年のオープンキャンパスが開催されました。

とても暑い中でしたが、約150名の方にお越しいただきました。

会場の講義室はほぼ満席!ありがとうございました。

まず学科長の高橋先生による学科説明が行われ、本学科で学べることや、

どんな授業があるか、また地域連携の様子などもお伝えしました。


その後、入試委員の奥西先生から本学の入試制度や日程、大学入学までに学んでおいてほしい教科等をお伝えしました。 


その後、3,4年生の先輩から学生生活について、なぜ本学を志望したかなど
受験を検討される方々に体験談をお話しました。皆さん真剣に聞いてくれていたことが印象的です。

そしてお待ちかねの青田先生による模擬授業を体験していただきました。
35分と短い時間でしたが、
・美学ってなんだろう?
・風景を見て感じる美しさとは?
などの疑問から、身近な例と巨匠の風景画まで網羅する濃い授業でした。
美学という学問への興味も高まったのではないでしょうか?


その後は個別相談会も開催され、充実した一日となりました。

本学科は意欲溢れる皆様の入学をお待ちしております!


2023年7月14日金曜日

「芸術の現場から」
6月26日 吉河歩香先生

「芸術の現場から」6月26日の講師は、益子陶芸美術館学芸員の吉河歩香先生をお迎えしました。

吉河先生は、本学文学部美学美術史学科を卒業された後、学習院大学大学院で近代陶芸について専門的に学び、修了後は研究テーマであった益子焼を専門とする益子陶芸美術館で学芸員として活動されています。陶芸分野の若手学芸員として活躍が注目されています。

ご講義は、「新米学芸員のリアルな日常」と題して行われました。学芸員としての日頃のお仕事を画像を用いながらとても分かりやすくお話し下さいました。画像には、扱われている美しい陶芸作品も豊富に登場し、作品を楽しめる場ともなりました。

履修者の中には学芸員課程を履修する人も多く、本学出身の年齢の近い現役学芸員である吉河先生のお話は、実感として受け止めることができたようで、まさに「リアル」を感じ取ったようです。授業後に提出されたコメントにも、学芸員の仕事内容のことがリアルに分かった、学芸員の仕事に一段と惹かれた、県女出身の方にお話をしてもらえてよかった、年齢の近い方にお話を聞けてよかった、などの声が寄せられました。
ご講義の最後には、ご持参くださった陶磁作品を実際に鑑賞したり、扱わせてもらう時間を設けて下さり、一段と印象深い経験となりました。

吉河先生、充実したご講義、ありがとうございました。

◇【益子陶芸美術館】
http://www.mashiko-museum.jp/

2023年7月12日水曜日

「芸術の現場から」 7月3日 松本美枝子先生





「芸術の現場から」の講義では、73日(日)に現代アーティストの松本美枝子さんをお迎えしました。

 

松本先生は、茨城県常陸太田市を拠点に、さまざまなアーティストインレジデンスにもご参加されつつ、制作活動をされています。

実践女子大学文学部美学美術史学科をご卒業後、学芸員、写真家、そしてアーティストとしてさまざまな仕方で芸術にかかわるお仕事をされてきました。

昨年は、国際芸術センター青森にて個展「具にみる」を開催。

地元では「メゾン・ケンポク」を運営され、アートを地域に開く活動をされています。

現在は、トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)のアーティストインレジデンスにてリサーチ活動をされている最中で、都市における自然環境のありかたについて河川をベースとして考察されています。

 

松本先生のご講義では、大学生の頃から現在までのさまざまな活動や、そのなかで生まれた作品・プロジェクトについてお話しいただきました。

 

大学を卒業したあと、まずは学芸員としてご活躍された松本さん。

お仕事とご自身の制作を両立させながら、やがて写真家として独立されました。「写真」と一口に言っても、商業写真から現代芸術の文脈へと、幅広いお仕事をされてきた松本さん。

大学進学後の進路を考える学生たちにとっても、芸術と関わりながら社会のなかで生きていくうえで参考になる、いろいろなイメージが見えてきたということが、授業後の感想を通じて伝わってきました。

 

松本さんは、地質のような一見すると「自然」と思われるようなものもまた人間の社会や産業と関わりあっていることを静かに明らかにしていく作品を制作されています。

またそれらの作品を、さまざまな芸術祭などで展示されてきました。写真をベースとするアートの可能性、また写真家の仕事についてよく知らなかったけれど、松本さんのご講義を通じてわかるようになったという学生たちの感想もありました。

またメゾン・ケンポクをはじめとする地域とアートの関わりについても積極的に取り組まれていることにも関心を持った学生が多くいたようです。

 

最後の質疑応答でも、カメラに関する質問や、制作と仕事の両立、また制作を続けていくうえでの工夫など、活発なやり取りができ、大変有意義な時間となりました。

 

松本先生、素敵なご講義、本当にありがとうございました。

2023年6月22日木曜日

「アートマネジメント特講1」の授業で玉村町文化センターに見学に行きました

 6月15日の授業時間に29名の学生が玉村町文化センターに見学に行きました。

この授業では文化施設の運営やマネジメントも取り上げていますが、
大学内の講義のみではやはり見えにくい部分もたくさんあります。
そこで昨年より授業でセンターにお邪魔して、
運営の実際や、照明、音響体験をプロのスタッフの方から
教えていただいています。
この日は3班に分かれ、ホールを見学させていただきました。
まずはホール全体のお話を伺い、施設管理や事業について教えていただきました。
その後、舞台裏、照明、音響と順番に回り、
普段は見れない、触れない舞台の裏側を少し見せていただきました。
音響体験では数名の学生がマイクを通して自身の声を
美しくホールに届けてくれることに感動!
スピーカーからどうやって音が流れるのかなどもなるほどという場面が多かったです。
照明体験では照明の色はどうやって作られているのか、
実物を見せてもらいながらお話を聞くことで、理解が進みました。

舞台の裏で感動を届けるお仕事に触れ、
最後の質疑応答では活発に質問が飛び交っていました。

貴重な体験をお忙しい中ありがとうございます。
これからも最も近い文化ホールですので
いろいろなかたちで関われるといいですね!

2023年6月5日月曜日

「芸術の現場から」 5月29日 向田陽佳先生

「芸術の現場から」6回目となる講師は、根付師の向田陽佳先生をお迎えしました。

向田先生は、横浜国立大学教育学部美術科書道専攻を卒業、資生堂宣伝部で勤務されたのち、根付師として活動されています。たばこと塩の博物館「現代根付展」出品、「第一回現代木彫根付公募展」最優秀賞を受賞、「向田陽佳―根付と小さきものたちー」日本橋三越本店美術サロンにて個展、東京国立博物館、公益財団法人 京都清宗根付館、高円宮家所蔵多数など、作品が収蔵されています。
現在は、国際根付彫刻会 会長も務められています。

ご講義の前半は、「根付概論」の配布資料をもとに進められました。

そもそも根付とは?
初めて聞く履修生もいるかもしれません。

まずは、どんなものなのか、どういう用途で使われているのか、その辺りからスタートしました。
明治以前、男女を問わず「着物」を着ていた日本の文化、洋服と違ってポケットがない「着物」、何かを持ち歩くためには、物が入った巾着袋を手に持つか、腰に結んだ帯に提げるかなど、限られた手段しかありませんでした。
そこで生まれた実用品、帯に固定するための“ 留め具 ”が「根付」。

どの時代から?
根付の歴史を江戸時代中期に描かれた風俗図絵や浮世絵などから説明。帯の形状が時代とともに変化していく過程で、実用的な部分を重視しながら、だんだんと凝った細工を施すように。
“使って楽しむ”、“見せて楽しむ”お洒落アイテムの地位を確立していったことを話されました。

講義の中盤では、根付の特徴や種類、また実際にどのような工程で制作していくのかなどスライドを見ながら説明していただきました。
特徴としては、紐を通す穴があいていること、腰につけて邪魔にならず、手のひらに収まる程度の大きさであること、様々な角度から見ても彫刻や細工が施されていることなど。

根付の種類も幅広く、形彫(かたぼり)根付、饅頭(まんじゅう)根付、鏡蓋(かがみぶた)、差(さし)根付、帯はさみ根付、透かし彫り根付、面(めん)根付、等々、細かい形態に分類するとまだまだ種類があげられるようです。
いかに人と違うものを身につけるか、そこに江戸時代の人は粋を感じていたのかもしれません。

言葉遊びも好きな向田先生、完成度の高さに加え、「ひねり」を作品に込められているそうです。硯の作品の例は、履修生にも大変響いたようです。
極小の中で生み出される圧倒的な超絶技巧、それを支えるのは手に馴染んだ道具。師事をされた先生のもと、左刃(ひだりば)という特殊な彫刻刀は向田先生の自作。見たこともないような刃の形ばかり。
ヤスリも天然のトクサなどを使ったり、染料も自ら抽出しているとのこと。時間をかけて制作することの大切さや、金工、漆、染織、陶芸など、工芸の世界に共通した道具の大切さが伝わってきました。

そして後半は、資生堂宣伝部時代のお仕事の紹介や根付に興味を持ったきっかけ、根付師になるまでの道筋など、当時の経験を交え話されました。
履修生にとっては、これからの道筋の一つとして、捉えてくれたかもしれません。

ご講義終了後、持参された根付関係の図版などを見ながら、履修生との対話。
学生にとっては、とても有意義な時間となりました。

向田先生、素敵なご講義、ありがとうございました!

◇【 東京国立博物館 本館2階 根付 高円宮コレクション室 】 http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4411

◇【 公益財団法人 京都清宗根付館 】http://www.netsukekan.jp/

向田 陽佳SNS

2023年5月26日金曜日

「芸術の現場から」 5月22日 現代美術家 宮島達男先生にお越しいただきました

 3回目の「芸術の現場から」では現代美術家の宮島達男先生にお越しいただきました。

宮島先生は国際的にもご活躍されている第一線のアーティストです。


今回はいろいろなご縁が重なり、本授業にお越しいただくことが叶いました。

今日のご講義では、前半は先生の作品のご紹介をしていただきました。


既にHP等で予習をしてきた学生たちですが、ご本人から作品のコンセプトや
作品に込めた想いをお聞きすることで、「なるほど、そういうことなのか」と真剣に聞き入っていました。

前半は世界各地に所蔵されている作品のご紹介、2つのソウゾウリョク(想像力と創造力)が人間力ともいえること、現在アメリカで行われている「STEAM教育」には中心に「ART」があることなどポイントを押さえながらお話いただき、アートの役割を考えるきっかけにもなりました。

その後「Art in You」すべての人にはもともとアートが備わっている、すべての人が創造力/想像力を発揮することが出来るというお話もご自身のローカルな場でのプロジェクトなどを交えながらお話してくださいました。

時折哲学者の言葉も紹介され、美学美術史学科をはじめとする本大学の受講生はその言葉にハッとさせられた人も多かったのではないでしょうか。

先生のお話はポイントを押さえていて、1年生や美学以外の学生にもとても分かりやすく、またアートの力を感じ、聴講した4名の教員もじ~~んとしていました。


後半はいよいよ「時の海ー東北」プロジェクトのタイム設定ワークショップです。
これまでも各地で展開してきたワークショップですが、今回は聴講する学生たちが実際にプロジェクトの作品を構成するタイム設定を行いました。

先生からのご説明の後、本プロジェクトのディレクター嘉原さんの進行により、ワークシートにカウントダウンのスピードとコメントを記入していきました。


学生たちはしばらく静まり返り、じっくりとそれぞれ考えていました。

あとで宮島先生が「こんなに静かだったのは初めてだ」とおっしゃったように、真剣そのものの表情でした。

そして、記入し終えた人から、先生に直接シートをわたしに行きます。そこでは短い間ですが、コメントを読み、学生一人一人と対話をしてくださいました。

             みんな並んで提出・・・!青田先生も
一番乗りの杉浦先生!

この交流はきっと一生の思い出になることでしょう。

そして、2027年のプロジェクト作品の完成が楽しみですね。


宮島先生、そして嘉原さん、皆様本日は貴重なご講義とワークショップの体験をありがとうございました。今後のご活躍もお祈りしています。