2022年7月1日金曜日

6月27日「芸術の現場から」・・・造形作家 森竹巳先生

「芸術の現場から」10回目となる講師は、昨年度まで本学で教鞭をとられていた森竹巳先生をお迎えしました。

森先生は、群馬県太田市生まれで、群馬大学教育学部美術科卒業後、東京芸術大学大学院修士課程修了(基礎造形及び理論専攻)されました。
『構成』を基盤とした平面造形を中心に半立体や立体造形、インスタレーションなど材料も含め多様な表現を試みられています。近年は百円ショップで購入した商品を材料とした『百均造形』も多数発表。
また、太田市役所を始め多くの公共施設にモニュメントを設置、県立館林美術館そばの彫刻の小径にも作品を設置されています。

今回のご講義は、「造形実験の実績」と題して、昨年、太田市美術館・図書館で開催された個展の会場構成に沿った形で進められました。

*この美術館は、「ものづくり」をとおして育まれてきた大田市民の創造性を、これからの「まちづくり」に活かしていくための拠点として2017年に開館。内部と外部、表と裏の境があるような、ないような、気軽に行き来できる溜まり場、迷うことが楽しくなる空間の中で、素敵な作品や本に出会えるよう設計がなされています。
ホームページ参照→https://www.artmuseumlibraryota.jp
まずは、動画で全体の構成を視聴することから始まりました。
平面、レリーフ、立体、インスタレーションなど、さまざまな表現方法で制作された作品群。

G1展示室
「Allusion」のシリーズが展示されています。
ほのめかし、言及、暗示の意が含まれたタイトルで、1986年から制作されています。(世界では、チェルノブィリの原発事故が起こった年、現在の世界情勢は、、、)
幾何学的でとても大きな抽象作品。
分割を基にしたリズムがテーマ。
日常において繰り返される生活のリズム、季節の周期など、さまざまなリズムがヒントになっているようです。

次に、イベントスペースに移ります。
ここでは、立体造形、モニュメントマケットの展示。
テーマの一つに、螺旋(スパイラル)があるそうです。
植物や動物、自然界、気象などにも見受けられるこの螺旋構造、すこしずつずれていくことで形作られる構造の美しさに魅了され続けているそうです。

マケット
設置されているモニュメント

スライドの写真右上は、母校である県立太田高等学校の100周年記念のモニュメントとして制作された作品です。
作品コンセプトを説得、改めて言葉の力を認識しながら、公共空間、野外で長期間展示できる耐久性なども重視しながら制作されました。

続いて、スロープへ。
ポスターカラー、ケント紙、パネルなどで制作された、初期平面構成。モアレシリーズや紙、木、ステンレス、アルミニウムなどの素材で制作されたレリーフが展示されています。
ガラス面には、フラフープによるインスタレーション。

今ではあまり使わなくなったポスターカラーで制作されたこと、学生時代、映画を多く見ていたこと、抽象表現の美術に出会ったこと、実際に作品を見ることや専門書、展覧会の図録が増えていったことで、自ずといい作品がよくわかるように、美的直感も養われた経験などを話されました。

そしてG2へ。
ここには、「百均造形」のタイトルで制作された平面、レリーフ、立体、インスタレーションの作品が並んでいます。
まるで問屋さんのように買い物をされるそうです。在庫がないこともしばしば!

この作品は、何の素材で作られているでしょうか?

実は、楊枝。その数なんと、9万4千本!
根気、集中力、一番時間がかかった作品だそうです。刺す指先の感覚がなくなってくることも経験。
鑑賞者にとって、制作に費やされた膨大な時間の経過が伝わることも作品の強度につながっているのではないでしょうか。
講義終了後、いかに疲れないよう仕事を続けられるか、体の使い方やものの配置、構成など、些細なことにも気を配るのが習慣になっていることや「まゆゆ」「リ、リ、リング」「なみなみならぬなみ」など言葉遊びが大好きで、制作中にタイトルを考えていると伺いました。

「百均造形」とてもキャッチーな響きですね。

「まゆゆ」
「なみなみならぬなみ」

最上部のG3へ。
この部屋の作品は、ブラックライトに反応する蛍光色が使用されている素材で作られています。

最後に、履修生の皆さんに向けて、自身がどうしたいかを突き詰めていくことが大切。
森先生は学生時代に、まず個展の実現を考えたそうです。個展の開催後は、いかに続けていくこと、継続していくことを考えていると。そのためにも今の社会情勢では厳しい面もあるが、海外も含め、別の世界を見ることが創作の原動力にもなる、また日本を再認識することにもつながると締めくくられました。

森先生、素敵なご講義、ありがとうございました!

*画像の一部に、展覧会場で撮影したものが含まれています。 全て©yamazaki

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