2022年10月20日木曜日

「西洋美術史実地研修2」高崎市美術館に行ってきました

2022年度後期授業「西洋美術史実地研修2」が始まりました。

本授業は、前期授業と同様に、博物館施設での見学実習において作品実見することで、美術史学的な作品鑑賞方法を身につけるとともに、多様な博物館施設の運営実態を理解し、作品の展示方法について企画側の視点で鑑賞することを目的としています。
第1回(10月8日)は、高崎市美術館「アルフォンス ミュシャ展 美しき時代の女神たち」を見学してきました。チェコ出身のミュシャ(1860-1939年)は、19世紀末から20世紀初頭のパリでおもにポスター画家として活躍しました。
最初に柴田純江学芸員から、ミュシャの生涯や作風や、「ベル・エポック」と呼ばれた同時代のパリを彩った画家たち、本展覧会の見どころ、また高崎市美術館や隣接する旧房一郎邸についてレクチャーを受けました。

「ベル・エポック」は「美しき時代」という意味です。ミュシャの作品は女性が特徴的であり、その時代に君臨する女神たちのような存在であるということから、本展覧会のタイトルに「美しき時代の女神たち」という副題を付けたそうです。
祖国チェコを愛し続けたミュシャ(チェコ語読みでムハ)は、1910年にチェコに戻り、やがて大作の《スラブ叙事詩》連作を描きました。 本展覧会では、華やかなパリのポスターの中にも画家のチェコに対する想いが一つの音楽のように奏でられています。
旧井上房一郎邸も見学しました。井上房一郎(1898-1993年)は、高崎市の文化振興に大きく貢献した人物です。美術館に隣接する同氏の旧邸は、チェコ出身の建築家であり、群馬音楽センター(高崎市)設計者のアントニン・レーモンド(1888-1976年)の自邸兼事務所を写した建物として知られています。

高崎市美術館の柴田学芸員をはじめ、スタッフの皆さま、お蔭様で充実した研修となりました。どうもありがとうございました。

2022年10月2日日曜日

9月23日にアートマネジメントゼミが富岡まちなかわくわくワークショップ、高橋綾先生の「遊ぶデザイン展in富岡」を開催しました。

アートマネジメントゼミでは

 昨年より富岡市のまちなかにぎわい課と連携した事業を継続しています。

今年は初の試みとして、「富岡まちなかわくわくワークショップ」を富岡市役所しるくるひろばおよび議会棟で9月23日に開催しました。この取り組みは富岡市内でのにぎわいを行政と連携し、大学生が運営主体となり創出するものです。

これまで美術館との連携は長年継続していましたが、館内から屋外に出て、また異なる客層にも造形活動に親しんでもらうように試みたものです。

さらに同時開催として高橋先生の作品を一日限り展示し、来場者の方にふれて、また遊んで楽しんでいただくこととしました。

当日はあいにくの雨で、朝の準備時間は少し不安が・・・・

しかし、10時の開始前になると次々と雨の中親子連れの方がいらしてくれました!

受け付けを済ませて、好きなブースを回ってもらいます。

屋外では「ふわふわの泡遊び」、「スズランテープで遊ぼう!」の二つの造形体験が出来ます。また高橋先生の作品「ウゴクネリ」にも試乗できます。




屋内では「人型アート」、「お月見ショーウィンドー」を体験でき、

高橋先生の遊ぶデザイン展が二会場に設置されました。



さらに会場を巡るスタンプラリーではがらがらもできるということで

張り切って回る子どもたちのにぎやかな姿が見られました。

いろいろなブースがあり、家では体験できないものばかりで楽しかったという声を多数いただきました。

午前、午後とたくさんの方にご来場いただき楽しく学生たちも参加者の方々と交流できました。

ありがとうございました!


2022年9月27日火曜日

8月21日に館林美術館でアートマネジメントゼミがワークショップを行いました

毎年夏の企画展示に合わせてアートマネジメントゼミではワークショップを行っています。
今年は佐藤忠良展にちなみ、粘土に触れるプログラム「ミニチュア彫刻を作ろう」を開催しました。

やわからく、手につかない粘土を使って参加者の皆さんに好きな
ものを作ってもらい、予め学生が準備した石膏の台座に置き、
ミニチュア彫刻を作ります。


事前予約、満員御礼で90名の方にご参加いただきました。

参加者の方はおもいおもいのかたちを作り、
中には図鑑や資料を持ち込む強者も!
学生たちもサポートをしながら粘土の表現の幅広さに感心していました。




最後にコメントシートにタイトルと簡単なコメントを書いていただきました。
とても充実したワークショップで来館者の皆さんと交流を深めることが出来ました。
また来年!

2022年8月10日水曜日

R4「西洋美術史実地研修1」第4回研修

第4回研修は7月にリニューアルオープンした群馬県立近代美術館へ。 企画展「うるわしき薔薇―ルドゥーテを中心に」と常設コレクション展を見学しました。

鑑賞前には学芸員の方々から企画展・常設展についてレクチャーいただきました。
 
 企画展は薔薇をテーマにしたル・ドゥーテの版画「バラ図譜」を中心に、戦後日本の育種家・鈴木省三による「バラ花譜」の二口善雄による挿絵の水彩原画、資生堂の調香師の本のための群馬出身の写真家・石内都による薔薇の写真という三部構成。
 企画の苦労話や予算面といったここならではのお話もあり、また、版画など紙の展示の場合、保存のため照度を100ルクスに落とすが、今回、ルドゥーテの版画の展示ではさらに50ルクスにまで落としているなど、作品の展示と共に保存を担う美術館としての配慮などについても伺えました。

常設展のレクチャーでは、コレクションの収集方針や今回、出展されているピカソによる「ゲルニカ」をタピスリーにした「ゲルニカ・タピスリー」を中心にお話いただけました。
 布や紙など繊細な素材の作品は、保存上の問題から年間展示日数が定められています。
そのため「ゲルニカ・タピスリー」は群馬県立近代美術館では毎年年一回、夏のコレクション展で展示され、展示室の照度も100ルクスに落とされていると教わりました。
 このほか今回の常設展では、今年、生誕110年を迎える群馬出身のオノサトトシノブの特集展示やルドンの版画作品が展示され、日本美術セクションでは企画展に合わせて「花いろいろ」という特集展示がされていることなどを予習できました。

 鑑賞は企画展から。(展示室撮影には許可をいただいております)ルドゥーテによる精緻な版画作品に食い入るように眺め入ります。
薔薇の歴史で始まり、作品は薔薇の種類別に展示されていました。ルドゥーテの版画は多色刷りに更に水彩で補色されていますが、事前のレクチャーによると、その補色は主に女性たちが担っており、近年、ルドゥーテの出身地フランスでは彼が女性画家たちを育てたという功績が注目を浴びているようです。

 ルドゥーテの作品に続けて二口の水彩画を見ると、二口の作品にはどこか琳派など日本の花鳥画の伝統を感じさせるところがあるのに気が付かされます。最後のセクションは石内さん自身がインスタ―レーションした薔薇の写真とビデオアート。植物学や園芸への関心から咲き誇る姿が描かれたルドゥーテや二口の植物画と異なり、萎れゆく姿をもとらえた写真は逆に薔薇の生命力を写し取っているようです。

お昼休憩をはさんで、午後は2階に展示されている常設コレクション展へ。
まずは日本と西洋の近代絵画から。

中央のロダンによる彫刻を眺めたり、メモをとったり。
「ゲルニカ・タピスリー」も本館では至近距離で鑑賞でき、その大きさを感じるとともに、細部までじっくり観察できました。
展示に合わせて「ゲルニカ」の制作経緯やピカソによる初期構想を表すデッサンなども展示されており、制作の過程を知ることも。
  
オノサト・トシノブのシルクスクリーンによるカラフルな抽象とルドンの黒を基調とした幻想的な版画シリーズが続きます。


現代絵画セクションでは、福田美蘭《リンゴとオレンジ》、上田薫《なま卵》、草間彌生《レペティティブ・ヴィジョン-ファルス・ボート》と目玉作品などがそろって展示されているという充実した内容でした。
日本美術セクションとの間にも現代美術の立体作品が展示されていました。
 
 一人作品と向き合ったり、あるいは友達と話し合ったり、磯崎新設計の静謐な空間のなかで充実した時間が過ごせたようです。

2022年8月8日月曜日

富岡市立美術博物館で「アートマネジメント演習1」受講生が「第8回 夏休みわくわくワークショップ」を開催しました

 7月24日(日)に富岡市立美術博物館で「第8回 夏休みわくわくワークショップ」を開催しました。

例年3,4年次対象の「アートマネジメント演習1」の授業で、

子ども向けのプログラムを開発し、美術館で実践を行う活動です。

今年は4つのグループがそれぞれプログラムを開発して実践を行いました。

まだコロナ禍ということもあり、予約制、定員を設けての開催でしたが、感染対策をしっかりと行い、安全に実施することが出来ました。





参加されたご家族の皆さんは思い思いの造形を楽しみ、
学生は個々に合わせてアドバイスや声がけを行っていました。

「暗闇で光る」、「魚釣りを楽しむ」など夏らしいプログラムが体験出来て
皆さんとても満足されたようでした。

授業で考案したことを実際にやってみることで、
様々な気づきがありますね。

来年もまた頑張りましょうね。

2022年7月20日水曜日

オープンキャンパス開催

7月16日(土)・17(日) 美学美術史学科の学科説明会、個別面談が開催されました。

美学美術史学科の説明/模擬授業
時間 9:30~11:00
今年は、事前予約により全国から多くの高校生が参加。

高橋先生による学科全体の説明からスタート。


奥西先生から入試の説明がありました。


毎回、恒例になっている在校生2名から、大学生活の紹介がありました。
授業、ゼミの活動、部活などなど。


日本美術を担当している塩澤先生の模擬授業 「科学」として美術作品を「学ぶ」


最後に、参加されている高校生からの質問を受け、説明会終了。

この学科説明会の他に、事前予約により個別面談を2日間にわたり開催。


その他に、実技棟において、実技ゼミ生の展覧会「天夏無双」などを鑑賞することができました。
この展覧会は、実技ゼミのwebサイトでも見ることができます。
https://maiko46.wixsite.com/mysite-1

参加してくれた皆さん、ありがとうございました。

2022年7月17日日曜日

7月11日「芸術の現場から」 彫刻家 黒川弘毅先生

 2022年7月11日の授業では、彫刻家の黒川弘毅先生(武蔵野美術大学教授)にお越しいただきました。

黒川先生は、ブロンズ鋳造技術の研究や、屋外彫刻の保存の専門家でもあります。群馬県では、群馬県立近代美術館の建物前に立つブールデル《巨きな馬》の定期メンテナンスや、館林市にある「彫刻の小径」作品群の市民参加型による保守活動にたずさわっていらっしゃいます。

今回のご講義では、おもに屋外彫刻の保守活動と触覚鑑賞についてお話してくださいました。

まず、レオナルド・ダ・ヴィンチ以来のパラゴーネ(絵画と彫刻との優劣比較論争)の歴史に言及しつつ、多視点性をもつ彫刻の鑑賞は必然的に能動的になると語ります。なぜなら、彫刻の場合、作品の周りを回りながら見るため、身体の運動が伴うからです。
また、美術作品の鑑賞は「楽しむこと」であると、鑑賞の本質に迫ります。

「洗剤とブラシやスポンジを使う」

次に、実例を紹介しつつ、屋外彫刻の保守活動と触覚鑑賞との関係や、彫刻メンテナンスの意義へと話題が展開していきます。

彫刻の保守作業では、作品に多方向から水をかけ、洗剤を用いてブラシやスポンジで洗浄し、ブロンズ作品にはワックスを塗布して光沢を調整しながら仕上げます。
黒川先生は、それらすべての行為が作品を能動的かつ親密に鑑賞する機会となり、触覚と視覚によってある感情が鑑賞者の意識の内部に生まれる、それが「触覚鑑賞」であると説明します。
屋外彫刻の保守は、子どもや大人が市民活動として行うことができるため、美術作品を保存する共同体的意識も形成されるそうです。

黒川先生のご作品紹介

最後に、黒川先生の作品を見せていただきました。

スクリーンに次々と投影されていくブロンズ彫刻「シリウス」「ヘカテ」「ベンヌ・バード」「ムーン・フィッシュ」「スパルトイ」「ゴーレム」「エロース」シリーズの作品群。ブロンズ制作において一般的な原型は用いられず、作品の創出は、ブロンズの自重によって、あるいは砂の穴に直接ブロンズを流し込むことによって生成される形態との邂逅です。作品には、原初的なエネルギーの放出が見られます。

学生からの質問風景

今回のご講義を通して、学生たちは、彫刻を触るという発想に新鮮さを覚えることから始まり、彫刻メンテナンスの意義と「触覚鑑賞」という新たな鑑賞法を学んだようです。また、黒川先生の型にとらわれないブロンズ彫刻の魅力を教えていただきました。

昨年度、本学では芸術学専攻の大学院生を中心に屋外彫刻2点の保守作業を行いました。円形広場の噴水である半田富久《あづまうた》1982年と、「春の庭」の日時計である住谷正巳《鳩(日時計)》1987年です。(本学ウェブページ News & Topics https://www.gpwu.ac.jp/info/2021/11/post-330.html

その際に、群馬県立近代美術館学芸員の方を通じて、黒川先生にご指導いただきました。今回のご講義でその時の保守作業がまさに触覚鑑賞であったことをはっきりと認識することができました。

黒川先生、ご講義をありがとうございました。