2023年6月22日木曜日

「アートマネジメント特講1」の授業で玉村町文化センターに見学に行きました

 6月15日の授業時間に29名の学生が玉村町文化センターに見学に行きました。

この授業では文化施設の運営やマネジメントも取り上げていますが、
大学内の講義のみではやはり見えにくい部分もたくさんあります。
そこで昨年より授業でセンターにお邪魔して、
運営の実際や、照明、音響体験をプロのスタッフの方から
教えていただいています。
この日は3班に分かれ、ホールを見学させていただきました。
まずはホール全体のお話を伺い、施設管理や事業について教えていただきました。
その後、舞台裏、照明、音響と順番に回り、
普段は見れない、触れない舞台の裏側を少し見せていただきました。
音響体験では数名の学生がマイクを通して自身の声を
美しくホールに届けてくれることに感動!
スピーカーからどうやって音が流れるのかなどもなるほどという場面が多かったです。
照明体験では照明の色はどうやって作られているのか、
実物を見せてもらいながらお話を聞くことで、理解が進みました。

舞台の裏で感動を届けるお仕事に触れ、
最後の質疑応答では活発に質問が飛び交っていました。

貴重な体験をお忙しい中ありがとうございます。
これからも最も近い文化ホールですので
いろいろなかたちで関われるといいですね!

2023年6月5日月曜日

「芸術の現場から」 5月29日 向田陽佳先生

「芸術の現場から」6回目となる講師は、根付師の向田陽佳先生をお迎えしました。

向田先生は、横浜国立大学教育学部美術科書道専攻を卒業、資生堂宣伝部で勤務されたのち、根付師として活動されています。たばこと塩の博物館「現代根付展」出品、「第一回現代木彫根付公募展」最優秀賞を受賞、「向田陽佳―根付と小さきものたちー」日本橋三越本店美術サロンにて個展、東京国立博物館、公益財団法人 京都清宗根付館、高円宮家所蔵多数など、作品が収蔵されています。
現在は、国際根付彫刻会 会長も務められています。

ご講義の前半は、「根付概論」の配布資料をもとに進められました。

そもそも根付とは?
初めて聞く履修生もいるかもしれません。

まずは、どんなものなのか、どういう用途で使われているのか、その辺りからスタートしました。
明治以前、男女を問わず「着物」を着ていた日本の文化、洋服と違ってポケットがない「着物」、何かを持ち歩くためには、物が入った巾着袋を手に持つか、腰に結んだ帯に提げるかなど、限られた手段しかありませんでした。
そこで生まれた実用品、帯に固定するための“ 留め具 ”が「根付」。

どの時代から?
根付の歴史を江戸時代中期に描かれた風俗図絵や浮世絵などから説明。帯の形状が時代とともに変化していく過程で、実用的な部分を重視しながら、だんだんと凝った細工を施すように。
“使って楽しむ”、“見せて楽しむ”お洒落アイテムの地位を確立していったことを話されました。

講義の中盤では、根付の特徴や種類、また実際にどのような工程で制作していくのかなどスライドを見ながら説明していただきました。
特徴としては、紐を通す穴があいていること、腰につけて邪魔にならず、手のひらに収まる程度の大きさであること、様々な角度から見ても彫刻や細工が施されていることなど。

根付の種類も幅広く、形彫(かたぼり)根付、饅頭(まんじゅう)根付、鏡蓋(かがみぶた)、差(さし)根付、帯はさみ根付、透かし彫り根付、面(めん)根付、等々、細かい形態に分類するとまだまだ種類があげられるようです。
いかに人と違うものを身につけるか、そこに江戸時代の人は粋を感じていたのかもしれません。

言葉遊びも好きな向田先生、完成度の高さに加え、「ひねり」を作品に込められているそうです。硯の作品の例は、履修生にも大変響いたようです。
極小の中で生み出される圧倒的な超絶技巧、それを支えるのは手に馴染んだ道具。師事をされた先生のもと、左刃(ひだりば)という特殊な彫刻刀は向田先生の自作。見たこともないような刃の形ばかり。
ヤスリも天然のトクサなどを使ったり、染料も自ら抽出しているとのこと。時間をかけて制作することの大切さや、金工、漆、染織、陶芸など、工芸の世界に共通した道具の大切さが伝わってきました。

そして後半は、資生堂宣伝部時代のお仕事の紹介や根付に興味を持ったきっかけ、根付師になるまでの道筋など、当時の経験を交え話されました。
履修生にとっては、これからの道筋の一つとして、捉えてくれたかもしれません。

ご講義終了後、持参された根付関係の図版などを見ながら、履修生との対話。
学生にとっては、とても有意義な時間となりました。

向田先生、素敵なご講義、ありがとうございました!

◇【 東京国立博物館 本館2階 根付 高円宮コレクション室 】 http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=4411

◇【 公益財団法人 京都清宗根付館 】http://www.netsukekan.jp/

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