2018年7月20日金曜日

H30年度西洋美術史実地研修1 第4回研修

前期最後の実地研修は、午前も午後も上野で行いました。

午前中は東京都美術館で「プーシキン美術館-旅するフランス風景画展」へ。


ロシアを代表するプーシキン美術館の所蔵作品のうち、本展ではフランス風景画が来日しました。

19世紀後半に本展の目玉でもあるモネを初めとする印象派が知られていますが、本展では印象派以前17世紀、18世紀の代表的な風景画を見ることもできる構成になっています。

事前レポートでは、17-18世紀それぞれの時代を代表する風景画ジャンルである「理想的風景画」と「雅宴画(フェト・ギャラント)」について予習。
博物館学の授業として、モスクワのプーシキン美術館についても 予習。




17-18世紀までの風景画が現実の風景を構成し直して描かれていたのに対して、19世紀にバルビゾン派、印象派らの作品のように、写生した風景を描いた純粋な風景画が登場していく流れや、大都市パリとその周辺が魅力的な画題として取り上げられていく様子が、展示を通じてうまく解説されていましたね。

 一方、展覧会の掉尾をしめくくったアンリ・ルソーの作品はパリにいながらにして熱帯のジャングルを夢想したものです。
20世紀にはいって、再び風景画は「想像」によって描かれるようになります。




午後は国立西洋美術館で「ミケランジェロと理想の身体」展へ
入館前に「ミケランジェロについて」と本展のテーマである「理想的身体表現について」発表。
 西洋美術においては「理想的身体表現」は、古代ギリシア時代に八頭身のプロポーション、コントラポストといったポーズを備えた理想的身体という規範が生まれ、数多くの古代彫刻の傑作がこの規範に沿って作られました。

「古代の再生」であるルネサンスの美術運動の中では、この古代の「理想的身体表現」が追究されます。本展では、古代の彫刻作品と15-16世紀のルネサンス彫刻が比較できるように展示され、ルネサンスがいかに古代作品を学んでいったのかが示されました。
そのルネサンス期に古代に学びつつ新しい美の規範を作ったのが、ミケランジェロです。

本展では初来日となる「アポロ/ダヴィデ」像、「洗礼者ヨハネ」像が初来日。
ルネサンスを代表する彫刻家の作品を直に日本で見られる機会は滅多にありません。
前期の締めくくりにふさわしい鑑賞体験となったのではないでしょうか。

2018年7月2日月曜日

H30年度西洋美術史実地研修 第3回研修

第3回の実地研修は梅雨の晴れ間に行われました。
午前中は東京・六本木の国立新美術館で「ルーヴル美術館展」


収蔵作品380,000点以上を数えるルーヴル美術館から、今回の展覧会では、ルーヴル美術館全8部門(古代オリエント、古代エジプト、古代ギリシャ・エトルリア・ローマ美術、イスラム美術、絵画、彫刻、美術工芸品、素描・版画)から110点の「肖像芸術」をセレクトし、サブタイトルのとおり「人は人をどう表現してきたか」を見せる展示がされていました。









鑑賞前にいつものように事前学習の発表。
展覧会テーマをより深く理解するために
「肖像芸術について」、それから肖像に関連して出展されている「デスマスク」について学んできました。
準備を終えたら、鑑賞開始。
  
見所の一つがナポレオンの肖像。
古代ローマの皇帝たちの肖像、それからローマ皇帝に自分たちを見立てた歴代のフランス王の肖像を見てから、ローマ皇帝、フランス王双方の肖像の伝統を取り入れた新たな皇帝としてナポレオンが表されていたことが、絵画、彫刻、メダルなど多様な作品を通して示されていました。







盛りだくさんの展示に鑑賞後は少々ぐったり?


お昼を食べてから横浜へ移動。六本木からだと地下鉄で40分ほどになります。
午後は横浜・みなとみらいにある横浜美術館で企画展「ヌード NUDE」を見ます。
展覧会 ポスターは今回初来日で、目玉作品であるロダンの《接吻》。
イギリスが誇る近現代美術の殿堂「英国テート・コレクション」から19世紀ヴィクトリア朝から現代までの130点余の絵画、彫刻、版画が出展されています。
団体で申し込んでおいたので、美術館の係の方が横浜美術館の概容を説明してくださいました。
自分
たちで調べた横浜美術館の特色についても発表。

展覧会テーマ 「ヌード」は西洋美術に特有の伝統ある主題なので、今回は事前にそれに関する文献を全員読んで、「ヌード」の歴史を事前学習。ロダン作品についても、展覧会図録所収の論文で学んできました。







(ロダンの展示室のみ撮影可能でした。いろんな角度から大作をじっくり見ることができたでしょうか)
企画展にちなんで開催されているコレクション展「人を描く―日本の美術を中心に」には、バーン・ジョーンズ「遍歴の騎士」(企画展に出展)を明治に渡英した下村観山が模写した作品が展示されていました。














第3回研修は、「肖像」と「ヌード」といういずれも「人」を表した作品を200点ほど見ることになりました。19世紀に印象派が出てくるまで西洋美術においては、「自然」や「静物」を描くよりも重要だったのが「人を表す」ことでした。二つの展覧会を通して、西洋美術の真髄の一端に触れることができたのではないでしょうか。

 さて、次回で前期の実地研修は最終回です。どのような作品に出会えるでしょうか。