2018年5月31日木曜日

H30年度「西洋美術史実地研修1」第2回研修

「西洋美術史実地研修1」第2回研修では、午前中に上野で国立西洋美術館の「プラド展」、午後は新宿で損保ジャパン日本興亜「ターナー展」を鑑賞。

 17世紀以来のスペイン王室の収集品が核になってできたプラド美術館は、ルーヴル美術館やウィーン美術史美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリーと並ぶ世界有数の美術館です。




今回の展示は17世紀バロック時代にスペイン王室の宮廷画家として活躍したベラスケスの作品が7点が来日する貴重な機会。







入館前にはいつものように、事前学習の発表。
まずは「ベラスケスについて」、それからベラスケスと並ぶ17世紀スペイン絵画を代表する画家「スルバランについて」発表。
博物館学としての履修生には「プラド美術館について」調べてきてもらいました。

事前に予習を済ませてから、さあ、入館です。(混雑を避けるためか、本来の入口ではなく脇から入館。珍しい体験をしました)
今回の展覧会では、当時のスペイン王室コレクションにおける芸術の選定基準や現在、美術館に収蔵されている作品が本来はどのような場にあったのかが記録に基づいて再構成されており、17世紀のヨーロッパにおける宮廷美術のあり方が理解できたのではないでしょうか。

午後は、一転変わって、イギリス・ロマン主義の巨匠ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)の展覧会。



展覧会場の損保ジャパン日本興亜美術館は新宿の高層ビル群に立つ42F建てのビル最上階にあり、ゴッホの《ひまわり》が所蔵されていることでも有名です。
42Fに上がる前にロビーで流れている「ターナー」に関するビデオを鑑賞。
ターナーが生まれたロンドンの町並みや彼が訪れた土地も映像で見られ、よい予習になりました。


もちろん、ここでも事前学習に基づいて「ターナーについて」発表。
初期は写生に基づく”地誌的風景”と言われるジャンルで出発したターナーは次第に”ピクチャレスクな風景”を描くようになり、晩年にかけて独自の様式を確立していきます。また彼は油彩だけでなく水彩画も得意とし、彼の作品はその多くが銅版画になっています。(写真がなかった当時は、風景画に基づく版画集が現在の写真集の代わりをしていたのです。)
事前学習では、18世紀イギリスで美学概念である「ピクチャレスク」についても予習。
17世紀までは風景は整えられ、理想化されたものとして描かれましたが、ロマン主義時代には、「絵になるような」自然をそのまま描くことが流行ります。
数年前、イギリス人に対してロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵作品で人気投票をした際に、一位に輝いたのがターナーの作品だったといいます。2020年に発行される新しい20ポンド紙幣はターナーの肖像になる予定だそうです。まさにイギリスを代表する画家。
日本では夏目漱石が「坊っちゃん」とする小説の中でターナーの作品を紹介しおり、明治の日本ではターナーは、日本の画家にとっても水彩による風景画のお手本的存在でした。

今回の展覧会では、スコットランド国立美術館群から来日した油彩画や水彩画に加えて、郡山市立美術館所蔵のターナーに基づく版画が展示され、彼の幅広い活動を網羅的に見ることができました。


2018年5月20日日曜日

H30年度「西洋美術史実地研修1」

美学美術史学科では、前期と後期にそれぞれ「西洋美術史実地研修1」「西洋美術史実地研修2」の授業を行い、主に都内の美術館・博物館で企画展・常設展を見、実地に作品を学びます。この授業は学芸員資格を習得するために必修の「博物館学実習1」の授業でもあるので、多様な博物館施設の在り方や展示の方法なども同時に学ぶことになります。

平成30年度第1回目は4月中旬に行われました。
午前には六本木の国立新美術館で「至上の印象派展―ビュールレ・コレクション展」

スイスの実業家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956年)が集めた絵画作品の中から、印象派とポスト印象派の作品を中心に64点が選ばれて、展示されています。




入館前に、事前に用意したレポートに沿って作品や画家について発表します。

まずは、ルノワール作品とともに本展のポスターでもおなじみの《赤いチョッキの少年》を描いたポール・セザンヌについて学びます。

ポスト印象主義の画家であるセザンヌは対象をすべて幾何学に還元して描くという手法から20世紀初頭に登場するキュビスムに影響を与えたと言われています。

本展では、ピカソやブラックらによるキュビスムの作品、また同時期の美術運動であるフォービスムの画家たちの作品を見ることもできます。そこで、もう一つの事前課題は「フォービスム」について。
あまり聞き慣れない美術運動かもしれませんが、予習した上で作品を見れば、制作意図を考えるヒントになるでしょう。

博物館学の授業としての履修者には「独自コレクションをもたない美術館について」調べ、考えてきてもらいました。
博物館施設の目的は収集と保管ですが、国立新美術館のようにコレクションを持たない美術館はドイツ語でクンストハレと呼ばれ、欧米では自由に斬新な活動を行える美術館として意義を持つとされています。

さて、予習を終えたら、展示室へ。
展覧会タイトルでは印象派作品ばかりのようですが、印象派以前の19世紀の巨匠たちの作品を見ることもできました。特にロマン主義の画家ドラクロワは晩年に色彩の研究をしており、印象派の画家たちにも大きな影響を与えています。

19世紀から20世紀初頭までのフランス美術の代表的な画家たちの作品を見て、展示室最後の部屋は本展の目玉作品であるモネの《睡蓮の池、緑の反映》

モネは数多く「睡蓮」をモチーフに描いていますが、1920/26年頃に描かれた本作は20世紀に入ってから彼の集大成であるオランジュリーの連作にも繋がる大作です。

午前中はビュールレという個人のコレクションから集められた秀作を見ましたが、午後は一人の画家に焦点を当てた展覧会です。東京、丸の内にある三菱一号館で「ルドンー秘密の花園展」を見ました。

ここでもまずは事前学習の成果を発表。「オディロン・ルドンについて」と彼が使った版画技法「リトグラフについて」予習します。





象徴主義の画家オディロン・ルドン(1840-1916年)はセザンヌ(1839-1906)と同時代人です。 初期には幻想的で詩的で、時にグロテスクな世界を版画で表現していましたが、1890年代頃からはパステルや油彩による色彩豊かな作品を手がけはじめます。
そこには、午前中にビュールレ・コレクション展で見たドラクロワの影響が指摘されています。
 今回の展示の目玉は、三菱一号館が所蔵する巨大なパステル画「グラン・ブーケ」とともに、ルドンがドムシー男爵の城館の食堂装飾として描いた壁画が、当時の食堂での配置を再構成した形で再現展示されていることです。
http://mimt.jp/redon/midokoro_04.html
 (こちらはコピーを使った再現)
 19世紀末から20世紀初頭というのは「装飾」に芸術家の関心が向かい、巨大な壁画の注文も増えた時代です。モネの「睡蓮」も実はそうした動きの中で描かれたと考えると、また違って見えるかもしれません。






2018年5月14日月曜日

H30年度新入生研修行事

本学では毎年4月、新入生を対象とした研修行事を学科ごとに実施しています。
美学美術史学科では、
①本学科で学ぶ上での基本的な姿勢を理解すること
②学生間のコミュニケーションを図り、学生生活への導入を円滑にすること
③各自が美術館・劇場等を積極的に訪れる習慣を身に付けるきっかけを得ること
以上の三点を目的として、東京都内の美術館などを二日に渡って見学する内容になっています。

今年は4月12-13日の二日間。両日とも素晴らしい好天に恵まれ、絶好の研修日和。
12日はまずホテルで簡単なオリエンテーションと互いの自己紹介でスタートです。


オリエンテーションが終わると、
両国駅を出発して、美術館へ移動です。

最初の見学は、皇居に近い北の丸公園にある東京国立近代美術館。
http://www.momat.go.jp/ge/about/

館内に入る前に日本美術史の先生から簡単に美術館についてと、今回見る展覧会についての解説を聞きます。



収蔵品からセレクトした「MOMATコレクション展」で、日本近代美術の流れを概観。
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20171114/

今会期には原田直次郎 《騎龍観音》や菱田春草《賢首菩薩》などの重要文化財の展示も。


館内では各自、自分のペースで作品鑑賞。
気になった作品の前でメモをとったり、じっくり細部を見つめたり。



常設コレクションは写真撮影も可能です。










続いて銀座に移動し、歌舞伎座で四月大歌舞伎鑑賞。


今年の夜の部の演目は、鶴屋南北の「絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」。

主役の悪役二人を一人二役で演じる演目です。通常、歌舞伎は名場面だけが演じられることが多いですが、今回は、話の冒頭から最後までを「通し」で見ることができ、筋立てがつかみやすく、充実の鑑賞です。



二日目は上野へ。
最初は、国立西洋美術館で「プラド美術館展」見学。
 


世界遺産に登録されている国立西洋美術館の建築と、「プラド美術館展」についての解説を聞いてから入館。



ベラスケス作品7点が出展されるなど有名作品が多く出品されていました。






見学の後は、恒例の集合写真です。
この頃には、皆さん、ずいぶん打ち解けて、笑顔が多いですね。

ロダンの「地獄の門」の上部の彫刻を真似てみました。
最後は、同じ上の公園内にある東京国立博物館へ。

 入館前には、先生から、国立博物館を構成する各館の紹介と展覧会の解説。

本館の常設展では近代以前の日本美術の流れが概観できます。





今年は常設展に加えて、企画展「名作誕生ーつながる日本美術」展を見ました。
 「名作誕生」展では、文字通りの名作が揃っていましたが、
13日は初日であったためか、それほどの混雑はなく、幸運でした。
これから授業でも習うことになる名作をじっくり鑑賞できる良い機会になりました。
二日間、互いに懇親を深め、充実した研修成果を携えて、帰途につきました。
 今年は、4月にはソメイヨシノが咲ききってしまい、上野の桜もすっかり葉桜でしたが、東京国立博物館の裏にある庭の八重桜は見事に咲き誇っていました。
新入生の皆さんのこれからの大学生活もこの花のようになりますように。


【大学院】学内展示「パネル・バードウォッチング 翼のあるものたち」(~5/31)開催

【大学院】学内展示「パネル・バードウォッチング 翼のあるものたち」(~5/31)開催

 大学院芸術学専攻では、西洋美術史の授業(藤沢担当)で鳥や翼、飛翔をテーマのひとつとし、履修者の研究分野と関連させながら、古代やルネサンス時代の造形表現や文学作品などを扱いました。本パネル展示では、その中からいくつか作例を選び、翼のあるものたちの生きいきとした造形表現を紹介しています。

期間:2018年5月9日(水)~5月31日(木)
場所:群馬県立女子大学新館1階廊下

参加学生(3名)

展示作業風景