2021年5月30日日曜日

「アートマネジメント特講1」の授業で群馬県立近代美術館見学に行きました。

5月13日、「アートマネジメント特講1」の受講者で授業時間内に 群馬県立近代美術館の見学に行きました。 例年この授業では美術館の教育普及事業について学んでいます。 大学で理論を学んだあと、本日は美術館に実際に赴き、普及担当の方からお話を聞いて、 その後展覧会をさせていただきました。
担当の小菅先生よりお話をいただきました。 広い会場を用意していただき、短い時間ではありましたが、 美術館の職員の方がどのような仕事をしているのか、また 普及ツールについて紹介いただきました。
見学させていただいた展覧会は常設展と企画展「デミタスカップの愉しみ」です。 デミタスカップ・コレクター村上和美さんのコレクションから精選したデミタスの逸品が約380点展示され、 学生たちも「きれい~」「ほしい。。。」などとつぶやきながら じっくりと鑑賞していました。 学外での授業はやはり刺激になりますね。 美術館の皆さま、どうもありがとうございました。

2021年5月24日月曜日

「芸術の現場から」山重徹夫先生

本日の『芸術の現場から』は、中之条ビエンナーレディレクター、ビエントアーツギャラリー代表の 山重徹夫先生にお越しいただきました。 群馬県内の国際芸術祭といえば、中之条ビエンナーレ!といわれるように 2007年から始まった取り組みについて、そのきっかけや立ち上げ、これまで行われてきた 芸術祭の様子などをたくさんの画像、映像資料とともにご紹介していただきました。
アーティストってどんな人なのだろう?というお話から始まり、 アーティストが主導で行う場を作りたい、コミュニティをもう一度再生させたいといった思いから ディレクターを長年務めていらっしゃったとお話しして下さました。 紹介してくださった内容は多岐にわたるもので、 ご自身ディレクターがを務めた芸術祭のお話を交え、実際の現場の声を届けてくださいました。 山重さんは、国内外を問わず作家とじかに話をし、現場を回り、会場を探したりと 丁寧に作家や地元の方々と向き合ってきた様子が印象的でした。 また、その時々の社会状況に応じて芸術祭を展開し、国際交流やマルシェ、会期中のショップ、 サポーターの制度などを立ち上げ、全力で楽しみながら行っていることが伝わるものでした。
たくさんのご経験から『伊豆アートサイト』、『するがのくに富士ビエンナーレ』のお話、また ビエントアーツギャラリーのお話にも触れていただきました。 ディレクションというアートマネジメントにかかわる仕事がどういうものか、 その熱量に学生も圧倒された様子でした。 今年も秋には中之条ビエンナーレが開催されます。 せひ皆さんで足を運んでみましょう。 本日は貴重なご講義、ありがとうございました。

2021年5月20日木曜日

2021年度「芸術の現場から」多胡邦夫先生(TAGO STUDIO TAKASAKI)によるご講義

5月17日の授業には、作曲家・音楽プロデューサーの多胡邦夫先生にお越しいただきました。

多胡先生の作詞・作曲による「home」(歌:木山裕策)は、2008年NHK紅白歌合戦出場曲であり、多くの人々に愛され続けています。
先生は、2014年に高崎市と設立したレコーディングスタジオ TAGO STUDIO TAKASAKI の運営責任者もなさっています。

ご講義では、これまでの音楽人生やスタジオの活動についてお話してくださいました。
幼少期に、枠組みから外れたことをしても評価されるという体験をしたことが、その後の人生に大きな影響を与えた、と語ります。
中学生時代にロックバンドを結成し、全国各地のコンテストで優勝を重ねます。その後、上京して作曲家をメインに活動。
作曲家が自分の天職(本気でやっていかなければならない仕事)だと初めて思えたのは、「home」を作曲してから。全国キャンペーン中に直接、ファンの皆様から感想を伝えられたことがきっかけに。
スタジオ風景

高崎市からの依頼を受け、行政と音楽家が協力してレコーディングスタジオを設立することに。行政上の難題を乗り越え、いくつかの奇跡にも恵まれて、夢の実現となりました。
選りすぐりの機材や雰囲気づくりに配慮した環境を整えた、全国に例を見ないレコーディングスタジオです。

高崎を盛り上げるためにできること。全国に発信できること。
ミュージシャンたちが自分たちの音楽を対価に、高崎に貢献してもらえること。

音楽活動の経験と実績を活かしたコンセプトによって、高崎市民のためのプレミアム・ライブや、若手育成のためのミュージックフェスティバル、子どもたちのためのイベントなどが開催されています。また、カフェは市民の憩いの場にもなっています。

今回、授業のために、特別にスタジオ内を撮影した映像を見せてくださいました。
制作者たちへの配慮が一つひとつの作品へのこだわりへと繋がっていることがわかりました。 そして、メジャーアーティストたちによる壁一面のサインからも、スタジオの重要性や存在意義が伝わります。

Made in Takasaki のヘッドホン

「小さな運は自分の努力で呼び込める。
 だけど、大きな奇跡は自分ではコントロールできない」

何かを達成するには、周囲の協力があってこそのものなのだと、あらためて気づかされました。

多胡先生のお話に惹き込まれ、教室は優しさと情熱に包まれていきました。

素敵なお話をどうもありがとうございました。


TAGO STUDIO TAKASAKI http://tagostudio.com/

2021年5月19日水曜日

「芸術の現場から」 デザイナー       小佐原孝幸先生

5月17日の「芸術の現場から」の講義、 講師はデザイナーの小佐原孝幸先生です。  先生は2009年よりひたちなか市のデザインによる活性化プロジェクトに携わられています。 2014年、ひたちなか市で功労表彰され、2015年、地域性をとりいれた『ひたちなか海浜鉄道湊線駅名標』で グッドデザイン賞を授賞されています。 講義ではまず「デザインの役割とは問題解決である」という定義を掲げられ、お話しされました。 問題は社会の中に多くあり、今回メインでお話しされました「駅名標デザイン」もひたちなか海浜鉄道湊線(以下湊線)が 抱えている問題を解決するためにデザインされたものでした。先生は、廃線の危機にあった湊線で、沿線の史跡や特産物を 取り入れた駅名標のデザインでひたちなか市の活性化に取り組まれています。  具体的にはとても興味深い3つのプロジェクトのお話をしていただきました。 1、広告媒体として使える駅名標デザイン 湊線の沿線にはたくさんの観光資源があります。その1つの駅「阿字ヶ浦駅」は温泉や海水浴場があり、 美味しいアンコウが水揚げされています。そこで先生は「阿字ヶ浦」の文字に観光資源である温泉マークや アンコウのイラストをとりいれ、それをみた人が地域に興味を持ってくれるような、そんな駅名標のデザインをされました。 読みやすい文字にするデザインではなく、考えてもらうデザインです。 みた人が感覚的に・能動的に理解できるデザイン、広告媒体として使える駅名標デザインを目指されて作られたとのことでした。
2、観光案内板のデザイン 駅名標デザインが評価されたことで、観光案内板のデザインにつながったようです。 駅名標と同じ考え方を取り入れた、観光資源のイラストと文字が融合した新しい観光案内板です。 例でお話しされた「華蔵院」駅名標デザインの「院」という文字には三角をつけたデザインが入っています。 その三角について、クイズ形式で受講生たちに問題を出されていました。 答えは猫の耳。華蔵院には古くから化け猫の民話が伝わっていることから取り入れた三角でした。 その他、幾つものデザインを紹介いただき、いずれもユーモアが感じられるとてもわかりやすいデザインで学生たちも興味津々でした。
3、フィナンシェ「駅名菓 トレンシェ」のデザイン ひたちなか市は障がい者就労訓練の場として、加工食品やクッキー、パウンドケーキ等お菓子を製造販売しています。 売上は、障がいを持つ方々の支援として、ひたちなか市の社会福祉法人「ハートケアセンターひたちなか」で役立てているものですが、 それらのお菓子が売れないと作業工賃も上がらないとのことでした。作業工賃向上は障がい者への支援として、重要な課題となっているようです。 小佐原先生がデザイン依頼されたものは駅名標と同じデザインをパッケージに取り入れたお土産用のフィナンシェ「駅名菓 トレンシェ」です。 パッケージの色から想像できる味(ピンクはイチゴ味、緑は抹茶味など)にし、食べる人たちがコミュニケーションしやすいデザインです。 駅名標が新聞、テレビ、インターネットなど様々なメディアに紹介された相乗効果もあり、現在売上げが伸びできているようです。 そのおかげでお菓子を製造する人々の工賃が少しずつ改善されてきているとのことでした。 デザインによる支援のつながり事例を分かりやすくお伝えいただきました。
最後にご自身がデザインされているフォント(文字デザイン)の話もしていただきました。 駅名標や案内板のベースになっているフォントは、小佐原先生のオリジナルです。 文字に取り入れられているイラストは、統一感を出すために、フォントの柔軟性が必要になってきます。 このオリジナルフォントの特徴は、正体、長体(縦長)、平体(横長)にも対応している点です。 様々なイラストと組み合わせてもイメージを合わせることができる優れたデザインで、圧倒されました。
最後の質疑応答では、学生たちからいつも以上に多くの質問があり、時間目いっぱいまで応えていただきました 。中でも印象に残った質問内容は「駅名標デザイン」の最初のきっかけについてです。 「駅名標のデザインは依頼されたものではなく、自身が鉄道会社へ提案したアートプロジェクトの作品だった」ことでした。 提案型のため、最初のデザイン料などは発生せずに展示されたもので、それが評判を得て本格的なデザイン仕事につながったとのことでした。 もう1つの質問からは、先生の論理的な思考は、ピタゴラスイッチで有名な佐藤雅彦先生に学生時代教授されたものだということもわかりました。 今回の小佐原先生のわかりやすいデザインのお話で学生たちも日常に溢れている文字デザインの興味が湧いてきたと思います。 大変貴重なご講義、ありがとうございました。

2021年5月7日金曜日

2021年度「西洋美術史実地研修1」が始まりました。

1年越しに「西洋美術史実地研修1」の授業が始まりました。 この授業は美学美術史学科の専攻科目として、また学芸員資格科目として例年、県内外の美術館・博物館施設にて展覧会を鑑賞し、博物館施設の様々な仕事、様態を学ぶ授業です。
 快晴に恵まれた4月の週末、群馬の森のなかにある群馬県立近代美術館を訪れました。


午前に常設コレクション展、午後に企画展「デミタスカップの愉しみ」を見学します。 事前に体温や健康状態などを書き込んだ入館票を用意して入館。 今回は常設展見学前に美術館の概要、常設展の見所について学芸員の方から特別にレクチャーをしていただきました。 講堂にて、普段は見られない美術館の舞台裏などもスライドにて見せていただき、美術館の仕事をかいまみることができました。
「作品をじっくり見てください」というアドバイスを受けたこともあり、一点一点かなりじっくり鑑賞。 昼前の集合までに見きれなかったようで、午後に再入場した学生もいた模様。


常設展ではこちらの作品のドローイングも見られました。
この日は担当学芸員による解説会の日だったので、鑑賞前にそちらにも参加。 西洋の磁器の歴史や収集の話に始まり、今回展示されているデミタス・カップの注目作品について丁寧な解説があり、よい予習になったようです。
ヨーロッパ各地の磁器工房が競うように作られたジャポニズムのデミタスや、新しいデザインを志向したアール・ヌーヴォーやアール・デコのデミタス。
      

ガラス製や内部まで絵柄があるものなど凝った技法のカップの数々が並び、まさに「たなごころの美」を愉しめる展覧会でした。