2025年8月5日火曜日

7月28日「芸術の現場から」上田市立美術館館長 山嵜敦子先生

 2025年7月28日「芸術の現場から」のリレー講座最終回は、上田市立美術館館長の山嵜敦子先生にお越しいただきました。

山嵜先生は本学国文学科の卒業生です。
上田市役所に入庁し、国保年金課、文化財課、観光課などを経て、同市の池波正太郎真田太平記館、上田市立博物館、上田市立美術館の学芸員を務め、2021年に同美術館の館長に就任されました。

今回のご講義は「サントミューゼって、どんなところ?」というタイトルのもと、ご自身の経歴とともに3館の特色、学芸員の仕事についてお話をしてくださいました。

池波正太郎真田太平記館

池波正太郎真田太平記館は、直木賞作家・池波正太郎(1923-1990年)が戦国武将・真田昌幸とその息子たち信之、信繁(幸村)の活躍をテーマに執筆した時代小説『真田太平記』の関連資料を中心に展示している文学館です。昌幸が築城した上田城の城下町であった上田にあります。

上田市立博物館

上田城CG復元画像

上田市立博物館は、上田城跡にあり、歴代藩主や上田地方の資料を収蔵・展示しています。
上田城の全体像はVRの再現動画で見ることができます。建物自体は現存していないため、動画制作にあたり、古地図や絵図などの資料を参照しながら構築していったそうです。一瞬のあいだ登場する画像も、学芸員たちによる綿密な調査にもとづいています。

「真田三代の活躍した時代」展ポスター(部分)

また、2016年にNHK大河ドラマ『真田丸』関連の展覧会「真田三代の活躍した時代」を開催した際には、展示した肖像画について、大学時代に日本の服飾史を学んでいたことが作品の年代比定に役立ったそうです。

サントミューゼ(概要)

サントミューゼ(平面図)

山嵜先生が館長を務める上田市立美術館は、上田市交流文化芸術センター(劇場)と芝生広場と一体となった施設「サントミューゼ」を構成しています。「サント」には、SUN(太陽)と蚕都上田の2つの意味、また「ミューゼ」には美やミューズ(芸術の女神)、美術館といった意味が込められているそうです。
この施設は、文化芸術をとおして、上田市民のシビックプライド(都市に対する市民の誇り・愛着)や持続可能な自治体を形成していく交流拠点としての役割を担っているとのことです。

上田市立美術館展覧会事業(企画展)

上田市立美術館の企画展は、「顕彰作家に関する展覧会」「美術館を身近にするための展覧会」「質の高い美術展」「『育成』をキーワードとする美術展」「地域に根ざす芸術文化の紹介」の5つの目的別に開催されているそうです。

ミュシャ展、作品展示

山嵜先生が担当なさった企画展「アルフォンス・ミュシャ 煌めきの女神たち」をおもな例として挙げ、起案や予算、会場の詳細な展示計画、設営、開催中の管理やイベント開催、閉会後の報告書作成、決算など、展覧会の進め方に関わる学芸員の仕事を紹介してくださいました。

サントミューゼの様々な活動

サントミューゼでは、高崎市を本拠地とする群馬交響楽団の定期演奏会が年2回開催されているそうです。

山嵜先生は、上田市役所に入庁した当初から学芸員を目指していたわけではなかったそうです。大学時代に取得していた学芸員資格があったことで、やがて学芸員職に就くようになりました。しかし、資格のみではなく、現場での実践経験が大切であると力説なさいました。
また、「どの世代にも美術や芸術は大切であると思う。それに気づくことができたのは、市役所内の配属で健康保険関係の仕事に就いていた時に高齢者たちと直接関わる経験を得られたから。無駄なことは何一つありません」と若い学生たちに語りかけました。

これからの大学生活や就職活動、仕事のあり方について、先輩からの温かいメッセージが学生たちに伝わったのではないでしょうか。

山嵜先生、素敵なご講義をありがとうございました。