2025年3月3日月曜日

「美学演習9」で色々な舞踊(ダンス)を習いました

2024年度の「美学演習9」(担当:武藤大祐)は、多様なジャンルの舞踊の初歩を実際に習ってみることで舞踊への理解を深めました。

舞踊には、外から見ているよりも、実際に体を動かすと初めて気付けること、感じられることがたくさんあります。この演習では、身体感覚を通して舞踊を見つめ、さらにディスカッションによって気付きを言語化したり、異なるジャンルの舞踊を比較することで考察を深めました。

最初の講師は、韓国舞踊のキムウイシンさん。「イプチュム(立舞)」という踊りの冒頭部分を習いました。練習用のチマ(スカート)を身に付け、足の運び方、手の動かし方を覚えて、呼吸と合わせていきます。

体の全体を滑らかに連動させるのが難しい踊りですが、90分×2回の練習でひとまず音楽に乗って動けるようになりました。K-POPとはまた違った朝鮮半島の美意識を体感しました。

次は歌手の中西レモンさんのご指導で盆踊りを体験。群馬県の草津節が岐阜県の「白鳥おどり」に取り入れられていることから、草津節を一人ずつ順に歌えるようになることから始め、次に振りを覚えて、歌いながら輪踊りを楽しめるようになりました。

盆踊りは、振り自体は易しくても、歌のサイクルと踊りのサイクルが微妙にずれているため、集団で行うゲームのような感覚が生まれます。

三番目は、岡田愛弓さんによるHOUSE。ビートの速い音楽に乗って軽やかに動き続けるストリートダンスの一ジャンルです。

足を置く位置を一歩また一歩と覚えていき、少しずつ振りのフレーズをつなげながら、一人一人が自分なりの滑らかな重心移動のコツやリズム感をつかみます。運動量がかなり多いですが、細かい足捌きとともに心地よく体を揺らせるようになりました。ちなみに講師の岡田さんは県女の卒業生。現在はダンスのインストラクターをされています。

最後は、壊れた人形のように独自のスタイルで踊るAbe"M"ARIAさんに、即興で踊るダンスを教わりました。

音楽をかけながらじっくりと体をほぐしてから、架空のボールでキャッチボールをしたり、ランダムに歩きながら自由に動きを変えてみたり、互いに動きを真似したりしている内に、テンションが高まります。ルールなしで動くので最初はみんな恥ずかしがっていましたが、動いている内に原始的な衝動が湧き起こって来るのを実感できたようです。

このように、多様な舞踊の初歩を各2回の授業で学び、舞踊の幅広さにふれるとともに、ディスカッションの時間では異なる舞踊の共通点や違いを探り、舞踊を分析する視点を練り上げていきました。やがて「上手/下手が重視される踊りと重視されない踊りの性格の違い」、「即興性と反復性はそれぞれコミュニケーションにどんな特色を与えるか」、「踊りにおいて「個性」とはどういうことを指すのか」といった美学的なテーマが考え出され、最終的にレポートの形に仕上げてもらいました。

「美学」は、芸術作品を鑑賞するだけでなく、自身の身体的な経験を対象として考察を深めることもできます。今回の演習では、身体感覚と言語感覚、具体的な体感と抽象的な思考を総合して「考える」ことを経験してもらえたように思います。

2024年12月17日火曜日

2024年度「西洋美術史実地研修1」第4回を実施しました

2024年12月14日(土)に実施した第4回実地研修では、アーティゾン美術館(東京)を見学しました。
午前中は、教育普及部の細矢芳学芸員からレクチャーを受けました。
ブリヂストン美術館の創設からアーティゾン美術館に改称して再開館するまでの歴史や、美術館のコレクションについて、また、開催中の3つの展覧会の概要や見どころを教えていただきました。
その後、一度展覧会場に向かい、3つの展覧会「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子―ピュシスについて」「ひとを描く」「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 マティスのアトリエ」を一通り各自で見学してから、レクチャー室に再集合し、今度は感想や質問による対話型のレクチャーとなりました。
学生たちからの積極的な発言と、細矢学芸員の学生たちに寄り添いながら話を展開させていくコメントによって活発な質疑応答となりました。
また、教育普及の具体的な内容や意義についてもお話をうかがいました。教育普及とは、多くの人々と美術館とをつなぐ、重要でクリエイティブな活動であると学生たちも実感したのではないでしょうか。

午後は、レクチャーでの学びや事前課題の予習をもとに各自で展覧会を見学しました。
「ピュシスについて」

「ひとを描く」ギリシア陶器

今回の研修では、細矢学芸員をはじめ、美術館のスタッフの方々に大変お世話になりました。どうもありがとうございました。

2024年度「西洋美術史実地研修1」(学芸員課程科目「博物館実習Ⅰ」)は、今回の研修をもって無事に終了しました。(授業担当教員 藤沢桜子)

2024年12月2日月曜日

2024年度「西洋美術史実地研修1」第3回を実施しました

2024年11月30日(土)に第3回実地研修を実施しました。

午前中は、パナソニック汐留美術館(新橋)の「ベル・エポック―美しき時代」展を見学しました。
「ベル・エポック」とは、フランス語で「美しき時代」または「良き時代」のことで、19世紀末から第一次世界大戦が勃発する1914年頃までの、パリを中心とした華やかで享楽的な雰囲気の芸術文化を象徴しています。
ジュール・シェレによるポスターを鑑賞

19世紀末のパリでは、ジュール・シェレ(1836-1932年)やアンリ・トゥールーズ=ロートレック(1864-1901年)によるポスターが街の外壁を飾っていました。

美術作品のほかにも、文学や音楽、ファッションなど、多様な領域の動向に注目した充実した展覧会でした。


午後は、三菱一号館美術館(東京)の「『不在」』―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル」展を見学しました。

展覧会の見学前に、美術館室の石神氏(管理運営担当)が三菱一号館の建物や美術館コレクションのコンセプトなどについてレクチャーをしてくださいました。
三菱一号館美術館は、1894年に三菱が建設したオフィス・ビルを復元しています。当初の建物は、イギリス人建築家ジョサイア・コンドル(1852-1920年)によって設計されました。ロートレック作品など、19世紀末の西洋美術作品が主なコレクションとなっています。
2023年4月からの設備メンテナンス休館を経て、この11月に再開館しました。
「不在」の展覧会は、美術館の再開を記念して開催されました。

はじめに、ロートレックのポスター作品や彼の周辺の人物たちなどのリトグラフが多数展示されており、「不在」「存在」の観点から鑑賞できるような構成となっていました。
続いて、現代フランスの美術家ソフィ・カルの「不在」をテーマとした写真や映像作品などを鑑賞しました。
美術館の再開館に伴って新設された小展示室にて小企画展の第一弾「坂本繁二郎とフランス」もあり、日本と西洋の両視点から学ぶことができました。
三菱一号館前にて

今回の研修では、パナソニック汐留美術館と三菱一号館美術館のスタッフの皆様に大変お世話になりました。 どうもありがとうございました。

2024年11月12日火曜日

2024年度「西洋美術史実地研修1」第2回を実施しました

2024年11月9日(土)に第2回実地研修を実施しました。
午前中は、SOMPO美術館(新宿)の「カナレットとヴェネツィアの輝き」展を見学しました。
カナレット(1697-1768年)は、「水の都」ヴェネツィアの景観画(ヴェドゥータ)を描いて人気を博した画家です。おもに英国貴族の若者が教育の集大成として文化の中心地を巡ったグランド・ツアーの最盛期には、ヴェネツィア旅行者たちが好んで彼の絵画を買い求めました。
カナレット《昇天祭、モーロ河岸のブチントーロ》1760年(部分)

会場では、カナレットが明るい部分を白い斑点で描いた技法を間近で観察したり、遠近法の道具カメラ・オブスクラを体験したりすることができました。
また、印象派の代表的な画家モネをはじめ、後代の画家たちによるヴェネツィアの絵画も展示されており、時代様式や文化的な背景を意識しながら鑑賞できるようになっていました。


午後は、森美術館(六本木)の「ルイーズ・ブルジョワ展」を見学しました。
ルイーズ・ブルジョワ(1911-2010年)は、六本木ヒルズの巨大な蜘蛛のオブジェ《ママン》を制作したアーティストです。
森美術館のスクール・プロジェクトにより、入場前にラーニング・キュレーターの白木氏が展覧会の鑑賞ポイントや美術館の展覧会作りなどについてレクチャーをしてくださいました。

入場した途端、アーティストの心象の空間に放り込まれたような感覚に襲われた人もいたかもしれません。暗がりで主張する作品群、映像、音声、香水のにおいの中で強烈な刺激を受けたのではないかと思います。

ルイーズ・ブルジョワは現代社会の問題を意識させるアーティストですが、1930年代から制作活動を行っています。シュルレアリスムなどとの関連を想起させるなど、西洋美術史の観点からの作品鑑賞が可能です。


SOMPO美術館と森美術館のスタッフの皆様に大変お世話になりました。
どうもありがとうございました。

「ユリノ木物語」PT院生メンバーが錦野祭にステージ出演しました

「ユリノ木物語 群馬県立女子大学の歴史研究」プロジェクトチームのメンバーである芸術学専攻の院生6名が11月2日と3日の錦野祭においてステージ出演し、開学記念樹ユリノキや、建築業協会賞を受賞した玉村校舎、また円形広場の噴水彫刻について周知活動を行いました。
開学記念樹ユリノキの花(パネルB)

ステージ出演は院生たちによる発案・準備で、クイズによる会場参加型の発表形式を取り入れ、正解者たちにはオリジナル・デザインの缶バッジをプレゼントしました。会場の皆さんにも楽しんでいただけたようです。
初日は大雨の中で奮闘
パネルは、本学正面玄関前のユリノキ2本(左)と円形広場の噴水彫刻(右)
噴水は、群馬ゆかりの作家である半田富久氏による作品《あづまうた》


10月下旬には、噴水彫刻の保存状態調査と洗浄を行いました。


※「ユリノ木物語 群馬県立女子大学の歴史研究」プロジェクトでは、教職員と大学院生が協働して本学の歴史研究や美術作品の調査・保存活動などを行っています。
 本プロジェクトは、本学特定教育・研究費を活用しています。(代表・藤沢桜子[文学部美学美術史学科/大学院文学研究科芸術学専攻 教授])

2024年10月13日日曜日

2024年度後期授業「西洋美術史実地研修1」が始まりました

本授業は美学美術史学科の専門教育科目であるとともに、学芸員課程「博物館実習I」の読替科目でもあります。 西洋美術の作品を実見して教室での学びを深めるとともに、美術館・博物館の展示や運営の実態を学ぶことを目的としています。

第一回実地研修(10月5日)は、国立西洋美術館に行きました。
午前中は企画展「モネ 睡蓮のとき」を見学。

展覧会のフランス語タイトル “Le dernier Monet. Paysages d'eau” (「晩年のモネ―水の風景」)が示すように、モネが晩年に描いた自宅の池に特化した展覧会であり、睡蓮や柳などの植物や、ゆらめく水の連続によって、モネの思考とともに彼の庭を逍遥しているような感覚をおぼえます。
モネ《睡蓮》をコレクション作品の代表の一つとして掲げる西洋美術館に相応しい、明確なテーマを持った展覧会でした。

午後は常設展を見学。

作品を見ながら西洋美術の歴史をたどることができる、充実したコレクション展です。 美術史概説の授業や教科書に出てきた画家や彫刻家たちが名を連ねています。
様式の違いや技法について学生同士で話し合う場面も見られ、作品実見によってさらに学びが深まったようです。

2024年8月7日水曜日

美学美術史学科 山崎真一 教授、渡辺五大 非常勤講師が出展している国際展「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」のお知らせ

新潟県十日町市、津南町全域を舞台に、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024 歓待する美術」が開催されています。
2000年から3年に1回のペースで開催され、今回で9回目を迎えます。美学美術史学科 山崎真一 教授と渡辺五大 非常勤講師が力五山(加藤力、渡辺五大、山崎真一のアートユニット)として、2009年から、川西エリアの高倉集落で発表を続け、今回で6回目。
作品タイトル《時の回廊 - 十日町高倉博物館 -》は、初の常設展示になりました。

概要
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024 歓待する美術
会期 2024年7月13日(土)~11月10日(日) 火水定休
会場 越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町) 川西エリア 高倉集落
主催 大地の芸術祭実行委員会、NPO法人越後妻有里山協働機構、
独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁

展示場所となる緑豊かな高台にある旧高倉小学校体育館は、さわやかな心地よい風が吹き抜けています。
浮世のざわめきを一瞬でも忘れることができる場所です。
ぜひ高倉にお越しください。

力五山HP
https://yamashin08273.wixsite.com/my-site-2
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024
https://www.echigo-tsumari.jp
大地の芸術祭 越後妻有 力五山紹介ページ
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artist/rikigosan-riki-kato-godai-watanabe-shinichi-yamazaki/

大地の芸術祭 全体のリーフレット

力五山のリーフレット

旧高倉小学校体育館外壁に2009、2022年に集落の方を描いた壁画を設置

内部の風景  光、音、声(集落の方)、映像によるプログラムを展開