今回の「芸術の現場から」の授業では、画家の稲垣美侑さんを講師としてお迎えしました。
稲垣さんは東京藝術大学大学院を修了、身近な住環境や自然への観察行為によって、私たちの生きる場所やそこに広がる景色について、作品制作を通じて問い続けていらっしゃいます。
今回は「”ここ”からはじまる景色をめぐる考察」というタイトルのもと、稲垣さんの学生時代から現在に至る制作活動を丹念にお話しいただきました。
稲垣さんは、学生時代の自画像作品を一例に、自分/他者はどのように成立しているのか、という問いを描く行為を通して考え、周囲の環境に目を向けるようになったそうです。家、街、そして宇宙と、自分(主体)とは外側に無限に拡大していく世界との関係によって見えてくるものではないかという気づきから、稲垣さんの制作は広がっていきます。
キーワードとなるのは「所在」すなわち私たち自身が存在する場所、です。稲垣さんは、「鳥の目線」と「虫の目線」、すなわち全体を俯瞰する視点と、周囲をどこまでも詳細に観察する視点を行き来することを大事にして、絵を描いたり展示空間を構成したりしているそうです。
学生時代には、ヨーロッパでの視察や留学を経験された稲垣さん。そこでも、セザンヌなどの著名な画家の作品と、その作品が生み出された土地や自然環境との関係を探るなど、やはり場所をキーワードに研究を進められたそうです。
絵画をベースとしつつ、インスタレーションやワークショップなど多様な仕方で表現をされている稲垣さんのお話は、参加した学生たちの制作意欲も刺激したようです。
稲垣さん、このたびは貴重なご講義ありがとうございました!
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