2020年1月31日金曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業)   照明家の中山奈美先生による御講義

リレー講座の第12回(2020.1.14)は、照明家の中山奈美先生にお越しいただきました。

中山先生は、1996年から劇団文学座の照明部に所属して活動してこられ、現在は独立して、現代演劇・ダンスの上演で照明を数多く手がけられています。時代の先端を切り開く若いアーティストたちからも厚く信頼される舞台照明家です。


今回は、「舞台照明:光を見ることについて 『Liminal Air』大巻伸嗣さんとの仕事から」というタイトルで、「横浜ダンスコレクション2019」の作品を中心にお話してくださいました。

現代美術家の大巻伸嗣さんの「Liminal Air」シリーズは、布を用いたインスタレーション作品で、大型の薄い布が光や風を受けて空間を漂います。横浜ダンスコレクションでは、イスラエル出身の振付家・ダンサー、エラ・ホチルドさんによる作品『Futuristic Space』の舞台で『Liminal Air Space - Time』が融合しました。数千年後の未来、大災害が起こった後の人類の姿を表現しています。

『Futuristic Space』の舞台映像

その作品の照明を担当なさったのが中山先生です。
永遠の時間軸をもつ「リミナルエアー」が漂うなか、照明は数千年後の未来の光を演出します。イメージを膨らませるため読書などリサーチを行い、照明のプランニングでコンセプトを固め、綿密な計算のもと図面に起していきます。
今回は、光源が見える劇場で、あえて光源の見えないスポットを作ることに決めたそうです。大きな布の下で踊るダンサーたちが見えるように、さらに布も映えるように、二重の効果を狙った照明となりました。布が設置されたら照明機材の修正はできないという難しさもあったそうです。光を生み出すためには緻密な計算も必要であると知り、驚きを覚えました。また、ステージの映像を見せていただいて、魅惑的で幻想的な照明に思わず息を呑みました。

『Futuristic Space』舞台映像

中山先生は、昨年秋のカネボウ化粧品による上海でのイベント「freeplus×HEBE×大巻伸嗣」の照明も担当なさいました。布が宙を舞い、ピアノやダンスのステージが展開されます。「光は当てたいところだけに当てる」ように、色彩効果も考慮しながら会場全体の照明をデザインなさいました。クラゲのように布が舞い、光の効果でこれほどまでに異なる空間が出現するのかと、圧倒されました。

「freeplus×HEBE×大巻伸嗣」照明の準備風景

照明の図面や機材の設置風景の映像も見せていただき、作品を作り込んでいく過程も学ぶことができた貴重な機会となりました。



今年の横浜ダンスコレクションでは、国際共同ビデオダンス作品『ON VIEW: Panorama』(振付・演出・映像:スー・ヒーリー)の制作に参加なさっています。照明デザイナーは香港から来日し、先生はオペレーターとして関わられるそうです。
この作品では、どのような光を演出なさるのでしょうか。心が躍ります。

『ON VIEW:Panorama』
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館
公演日時:2020/01/31~02/02
ウェブページ:http://yokohama-dance-collection.jp/program/program01/

『Futuristic Space』映像資料提供:
横浜赤レンガ倉庫1号館[公益財団法人横浜市芸術文化振興財団]

「freeplus×HEBE×大巻伸嗣」映像資料提供:大巻伸嗣スタジオ

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2019年度「芸術の現場から」 2019年10月~2020年1月
火曜 16:20~17:50 群馬県立女子大学 2号館2階 CALL2号教室にて
スケジュールはこちらをご覧ください。
https://www.gpwu.ac.jp/dep/lit/art/schedule.html

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