2015年6月2日火曜日

H27年度西洋美術史 実地研修1 第2回研修

新緑も美しい5月に第2回の研修を行いました。
午前中にまず上野の国立西洋美術館で「グエルチーノ展」から開始。

でも、グエルチーノって誰?


うーん、あまり見たことない画家かも? 
ということで、まずは「グエルチーノについて」と事前レポートをもとに予習。
発表中。緊張しますね。後ろでは「考える人」が。
     1591年にイタリアの小さな町チェントに生まれたグエルチーノは、
      この町に近いボローニャで活動した古典的な様式の画家たち、
    所謂ボローニャ派に連なります。彼らはカラヴァッジョのリアリズム
    の反動として古代美術やルネサンスを学んだ画家たちです。しかし、
    グエルチーノは同時にカラヴァッジョのダイナミックな表現や劇的な
    明暗法も取り入れています。 
                        
    その生涯の大部分を故郷で活動しながらも、生前から18世紀まで
    名声を誇り、ゲーテやスタンダールらがその芸術を讃えました。

今回の展覧会はコンパクトでしたが、彼の初期から晩年の作品をそろえ、その画風の変遷が辿れる構成になっていました。特に縦横3×2m以上ある大型の祭壇画が展示されていたのが印象的でしたね。グエルチーノが好んで使った深みのあるブルーを展示の基調色とした展示方法も作品を映えさせており、見ごたえがありました。

出展作品の多くを貸し出しているチェント市立絵画館は、2012年5月に町を襲った地震のため被害を受けたことを受けて、いまだ復旧のめどが立っていないとのことで、今回の展覧会は震災復興事業として企画されたそうです。
大型の貴重な作品の多数が貸し出されているのもそうした理由からでした。
 
さて、もう一つの事前レポートは、グエルチーノの活躍したバロック期の美術についてでしたが、同時にこれは午後の展覧会の目玉作品が描かれた時代でもあります。

作品の前には人だかりが。
みんなちゃんと見られたかな?
 
「バロック」という形容詞が美術に使われた18世紀末には、この言葉は「変則好み、悪趣味、奇怪さ」といった意味合いで使われ地ましたが、この時代の美術にはグエルチーノが見せた古典主義的な傾向やフェルメールの静謐さも同居しています。

 
  
午後は、その17世紀に特に多くの傑作を生み出した「風俗画」というジャンルに焦点を当てた企画展「ルーヴル美術館展 日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」を見に六本木の国立新美術館へ。
 
この列に並んでチケットを買うだけで20分!
さすがルーヴル美術館展!

事前学習ではルーヴル美術館についても調べてきました。元は歴代フランス王が住む宮殿だったのを17世紀末にヴェルサイユ宮殿ができてからは美術ギャラリー、次いで文芸アカデミーの本拠として使われていました。美術館になったのはフランス革命後、ナポレオンの時代。美学美術史の学生なら一度は訪れてみたい美術館ですね。

今回のテーマの「風俗画」について発表。

庶民や貴族の日常生活を題材にしたこの絵画ジャンルは主に16世紀後半から花開きます。ことにフェルメールが活躍したオランダ17世紀が有名ですが、今回は古代ギリシアから18世紀フランス・ロココの風俗画などバラエティー豊かな作品が取りそろえられており、様々な時代の風俗的テーマの作品を、時代を超えて対比する構成をとっており、こうした企画が可能なのも、多くの所蔵品を有するルーヴル美術館ならでは、というところでしょうか。
 
入口前ではこの美女がお出迎え。



事前レポートでは、本展でたびたび出会うことになる「オリエンタリズム」についても予習。東方の風俗を主題とする「オリエンタリズム」絵画には、西洋の人たちが見た「幻のオリエント」の姿が映し出されています。風俗画は現実を写すもののようでいて、実は見る者、描く者がその対象に対して持っている幻想やイメージをうつしたものでもあることが分かります。

 会場はかなりの混雑。カフェスペースも人がいっぱい。

さすがに疲れましたね。
ひと休み、ひと休み。
新美術館各所におかれた椅子はいずれも著名な家具デザイナーの作品です。この椅子はハンス・H・ウェグナーがデザインした「スリーレッドシェルチェア」。

そばの壁に設置された解説に、美しいフォルムと「腰をおろした時のリラックス感を兼ね備えた」とあるように、みな、一度座ったら立ち上がれない模様。
お疲れさまでした! 
次回はどんな素敵な作品に出会えるでしょうか。

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