27年度前期最後の西洋美術史実地研修1は、ご覧の通り梅雨の晴れ間に恵まれました。
午前中は国立新美術館にてベルギー出身のシュールレアリスム作家ルネ・マグリッドの展覧会。
快晴の空にはマグリッドが描いたような白い雲がぽっかりと浮かんでおります。
美術館前の緑の中には、作品をあしらったポスターが顔を見せています。
鑑賞前にいつものように事前レポートを元にした発表。
まずは「シュールレアリスム」と「ルネ・マグリッド」について。
また今回訪れる二つの博物館施設がいずれも常設コレクションを持たない施設となります。そこで博物館学実習の履修生には、「美術館とコレクション」というテーマの事前レポートを用意仕手貰いました。博物館法における博物館施設の定義を再確認しつつ、ドイツのKunsthalleのようなコレクションのない博物館施設の意義について考察を加えた発表が披露されました。
マグリッド作品を模した入口から彼の世界に入りましょう。
日本では13年振りに開かれる大回顧展ということで、合計約130点が展示されており、初期のまだシュールレアリスム的な作風になる前の未来派的な作品、ポスター作品などから始まって、第二次大戦を経たあとの模索から晩年作までをじっくりと辿れる展覧会でした。
さて、午後は同じ六本木の森美術館へ移動。
ルイーズ・ブルジョワの蜘蛛のオブジェの下をくぐって、見に行きますのは、行列も出来て大人気の「Naruto」展? はたまた「スター・ウォーズ」展? ではなく、こちらポンピドゥー・センター・メス(パリのポンピドゥー・センターの別館)で行われた展覧会を元にした現代美術の企画展。
「シンプルなかたち:美はどこからくるのか」という表題通り、古今東西の作品約130点を、時空を越えたつながりをもって展示することで19世紀から20世紀に数学、機械工学、生物学、地質学や考古学の探求で再認識され、同時代の芸術家たちをも触発した「シンプルなかたちの美」の魅力を浮かび上がらせた展覧会。
入館前には、ポスターにも使われているルーマニア出身の彫刻家コンスタンティン・ブランクーシの《空間の鳥》について事前学習。また、ドイツ・ルネサンスの巨匠アルブレヒト・デューラーの版画作品《メランコリアI》とそれにインスパイアされた彫刻作品が展示されているので、デューラー作品についても発表してもらいました。
オラファー・エリアソンのプリズムを使ったインスタレーション《丸い虹》。(会場内は一部、インスタレーションのみ撮影可能でした)
光、プリズムが光を受けて壁に作り出す虹、プリズムの影、それらの動きが刻々と変わり、長く見入っている人も多くいました。
元映写技師だったというアンソニー・マッコールによる《円錐を描く線》。スモークに当たる光が作り出す不思議な光景は別世界への入口のよう。
大巻伸嗣 《リミナル・エアー スペース―タイム》
窓の外の六本木の街並みとその上に広がる空をも取り込んだような作品。
これらの作品のように、光や空気、あるいは鳥の声、生命などなど、形にならないものの形をとらえようとする営みのなかで「シンプルなかたち」の美が追究されていったのではないかと思わせる興味深い展覧会でした。
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