2015年7月5日日曜日

第2回「カエルオールナイトピクニック in 群馬」が開催されました

7月3日夕方から4日朝にかけて、今年も芸術プログラム「芸術の現場へ3(コース1)」の企画「カエルオールナイトピクニック」(KAP)を開催しました。大学周辺に広がる水田に出かけ、カエルの声にみんなで耳をすましてみるというイベントです。発案者でジャワ舞踊家の佐久間新さんを講師として大阪からお招きし、約20名で一晩を過ごしました。企画リーダーは美学2年の本田さんです。
会場は大学そばにある現場3の新拠点「ひのたまり」。まずは自己紹介と、簡単な趣旨説明。
続いて、みんなで(なぜか)カレーを食べます。班ごとに手分けして家の台所で作り、持ち寄っています。

そして今年は、出発前に佐久間さんによるリズム感覚のワークショップがありました。各自が手拍子を打ち、異なるリズムを重ね合わせてみたり、佐久間さんの指揮に合わせてカエル風の鳴き声で合唱します。普通の「音楽」の授業とは違い、とても感覚的・身体的に音を体験するので、非常に盛り上がりました。
ウォーミングアップがすんだところで水田に出発します。時刻は21時過ぎ。
(新聞記者さんが撮影してくれています)
住宅街を抜けると一気にカエルの大合唱に包まれます。360度、カオスです。しかし耳を澄ませてみると一匹一匹の声の違いに気付くことができます。またいくつもの集団(あるいは地区)に分かれている感じもつかめてきます。
「ノイズは無視すると、かえって邪魔になる。耳をすますと、その魅力が分かる」(ジョン・ケージ『サイレンス』、柿沼訳、水声社、17頁)
聴くだけではなく、声を出してカエルとの異種間コミュニケーションを試みるのがKAP。うまく真似をすると、反応が返ってきます。何となく会話できているような、あるいは、一緒に合唱しているような状態になります。
しばらく各自で交信を試みた後、小雨が降って来たのでいったん拠点に戻り、感想を話し合いました。カエルとうまく絡めた人もいれば、交信をしていると思ったら別の誰か(人間)の声だった、という人も。
続いて佐久間さんのジャワ舞踊のデモンストレーション。佐久間さんが研鑽を積まれた中部ジャワのジョグジャカルタも、豊かな水田でカエルの大合唱が聴かれますが、ジャワのガムラン音楽はそうした自然環境からも影響を受けているのではないかとのことです。
男性舞踊の演目の一つ「クロノ」を素踊りで。体のあちこちが複雑に連動して同時に動き、時に力強く、時になめらかな踊りです。日本ではあまり見る機会のないジャワの典雅な舞踊に一同見入っていました。

さらに続いて、ペットボトルのワークショップ。
少し水を入れて、頭の上に乗せ、バランスを取りながら動きます。体軸や重心を微細に操作するので、自分の体に対する感覚を研ぎ澄ますことができます。
真夜中の怪しいワークの後、各自で少し休み、午前3時頃、再び水田に向かいます。
すでにカエルたちはかなり静かになっていました。ずっと梅雨空で気温が低いためかもしれません。鳴き声はポツリポツリとまばらな状態ですが、こちらから声をかけて場を盛り上げていくと一緒に鳴き始めるカエルもいます。
空が明るくなって来て、カエルはますます静かになり、入れ替わりにスズメやカラスの声が聞こえて来ます。
ちなみにサウンドスケープ論で有名なマリー・シェーファーも、「夜明けと日暮れ時、アオガエルと鳥の鳴き声が互いを補うようにして交差して現れるとき」の美しさについて書いています(R.マリー・シェーファー『世界の調律』、鳥越他訳、平凡社ライブラリー、461-2頁)。
締め括りは(なぜか)恒例のインドネシア体操。
今年も濃密な一晩となりました。「自然」と「文化」の間をつなぐのが「体」である、ということを改めて実感させてもらったように思います。
(昨年度のレポートはこちら

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