さて、前期最後の実地研修です。
午前中は六本木のサントリー美術館で「オルセー美術館特別協力 生誕170周年 エミール・ガレ展」。
アールヌーヴォーのガラス工芸家は日本でも人気が高く、今回の展覧会もサントリー美術館所蔵作を中心に構成されていました。
まずはエミール・ガレ自身についてと彼の「異国趣味」について事前発表。
ガレの活動した時代はヨーロッパでのジャポニスムの流行期。
日本で読まれるガレに関する著作の多くはガレの異国趣味をジャポニスムという側面で語りがちですが、今回の展覧会ではイスラムや中国のガラスや陶器の影響なども、ガレ自身のコレクションとそれに触発を得て作った作品とを並列することで示すなど、近年のフランスでのガレ研究の成果が盛り込まれていました。
今年は生誕170周年ということもあり、春先には東京都庭園美術館でもガレ展が開催されていました。あちらはガレと庭というテーマで主に花をモチーフにした作品やそのデッサンが展示されていたのに対して、本展では、ガレの昆虫や水中生物への関心(論文まで書いていたんですね!)を取り上げ、子どもの頃からの探求心がいかにデザインに結びついたのかを追った企画。
芸術家の生誕や没後の記念イヤーは多くの展覧会が開かれますが、同時にそこへ向けて芸術家研究が進展する良い機会でもあるのです。
さて、午後はなんと横浜まで遠出。
まさに猛暑という日差しに照らされた横浜美術館。館前の広場では子どもたちが噴水で水遊び。
今回の企画展はアメリカ出身の印象派画家メアリー・カサットの35年ぶりの日本での回顧展です。
(35年前に回顧展が開かれていたのですね!)ということで、しっかりみんな調べてきてくれていました。
アメリカ出身のカサットは当初は伝統的な絵画を学びにヨーロッパに来たものの、ドガとの出会いから印象派の仲間となった画家です。印象派には他にマネの義妹ベルト・モリゾや短命に終わったブラックモン、エヴァ・ゴンザレスなどの女性画家がいます。当時、ヨーロッパでは女性は国立の美術学校では学べず、女性向けの主題とされた「静物画」や(主に家族の)「肖像画」を描くものとされていました。
カサットは主題面では「母と子」や家族といった女性的な主題を描きつつも、大胆な筆使いや構図の取り方など、アカデミックな母子像に見られるのとは異なる自然な子どもの様子を描くなど、当時としては革新的な存在でした。また、版画作品はどこか同時代の白黒写真を思わせる陰影の工夫がなされていたり、表現者として模索していた様子が窺えます。晩年には、アメリカの女子の美術教育に携わったり、シカゴ万博で大規模な壁画を任されました。
印象派という呼び名は当時は批評家の悪口から始まり、画家たちは自分たちをアンデパンダン(フランス語で「独立した」「自立した」)と呼んでいたそうです。
カタログに掲載されていた彼女とドガに関する逸話。傲慢で短気なドガと誇り高いカサットは喧嘩が絶えなく、友人の1人がなぜドガのような人物とつきあえるのか?と尋ねられたカサットの答えが秀逸です。「それは私が自立しているからです」と。
画家としても人としてもまさにアンデパンダンだったんですね。
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