2019年7月4日木曜日

R1年度 西洋美術史実地研修2 第三回研修


第3回実地研修は六本木の国立新美術館と新宿の損保ジャパン日本興亜美術館で行いました。

午前中はまず「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展へ。

今年は、日本オーストリア修好150周年記念ということで、東京都庭園美術館「クリムト展」、目黒区美術館での「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック-デザインそして生活の刷新にむけて」、そして秋には国立西洋美術館で「ハプスブルク展」と、オーストリアの首都として栄えたウィーンがらみの展覧会が目白押しです。

その中では、本展は、1848年の三月革命を経て、近代都市へと生まれ変わっていくウィーンを見せる前半部、世紀末にアカデミーの規範を離れて革新的な美術・建築・工芸・デザインを生み出そうとするウィーン分離派とウィーン工房を扱った後半部といった構成で、ウィーンという都市とそこで生まれた様々な美が提示されていました。

発表はいつも緊張しますね。

 前回「クリムト展」でクリムトとウィーン分離派について学んだので、今回の事前学習では、展覧会副題にも名前があがり、展示において1セクションが当てられている夭折の画家エゴン・シーレについてと、世紀末ウィーンの建築および工芸・デザインを理解する上で重要な様式「ユーゲントシュティーレ」の特徴についても予習。
本展は、絵画だけにとどまらず、ポスターや食器・家具、ドレスなど、多種多様な展示作品があり、博物館展示を勉強している人にとっても興味深い展覧会でした。

午前中は、一つの都市と一時代の美術をテーマに、美術・建築・工芸・デザイン・ファッションに見られる「近代性」に焦点を当てた展覧会だったのに対し、午後は、一人の画家の活動を追うモノグラフタイプの展覧会でした。フランス19世紀、バルビゾン派の画家フランソワ・ドービニーは、日本ではあまり知られていませんが、モネにも大きな影響を与えた風景画家です。
鑑賞前の事前学習ではバルビゾン派とフランソワ・ドービニーについて予習。

 近代化していく都市パリから離れ、フォンテーヌブローの森の中の小村バルビゾン派に集った風景画家たち。彼らはそれまでの風景画家たちと異なり、戸外での写生を重んじたことで知られており、印象派の先駆けとなったと考えられています。

 彼らのうちドービニーは、バルビゾンにとどまらず、セーヌ河を船で旅行しながら、川辺の風景を描いた画家です。水面に反射する光を描いたその作品や船をアトリエにするというアイデアは若いころのモネに引き継がれました。

 今回の展覧会は、日本初のドービニー展ということで、国内外から集めた約20点の作品が展示されていました。最初のセクションではドービニー以外のバルビゾン派の画家たちの作品が紹介され、次いでドービニーが初期にアカデミックな様式で描いた風景画、それから様式を確立して以降の作品という展示構成で、バルビゾン派の中でのドービニーの位置づけ、風景画分野での彼の独自性を浮かび上がらせていました。
 ドービニーは版画作品も仕上げており、版画とともに版木も展示され、版画技法の解説も丁寧にされており、小さな展覧会ながら芸術家の魅力を伝えるための様々な工夫がされており、充実した鑑賞体験を得られたようです。

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