2024年4月24日水曜日

4月15日「芸術の現場から」 ~いつかは「わたし」になれるの? 堀川理万子先生(絵本作家)

 4月15日、画家で絵本作家の堀川理万子先生にお越しいただきました。


1「幼少期の絵画と海のアトリエについて」

 講義は、堀川先生の幼少期(幼稚園の時)の絵画作品「青いみかんとバナナ」を見せていただきながら、その絵画を描かれた時の話から始まりました。みかんの後ろにあったバナナが隠れてしまってみかんの上に乗っているようになってしまったのです。

思い通りに描けなかったショックをいまでも覚えているとのことでした。



次に「Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞」「講談社絵本賞」「小学館児童出版文化賞」など多くの賞を受賞された絵本作品「海のアトリエ」の話に移りました。

この担当の編集者から厳しい指摘を繰り返し受け、しょげかえる日もあったそうですが「大人になると叱ってくれない」「叱ってくれることはとても大切だ」と考え、積極的に取り組みまれたとのことでした。今ではこの編集者は「怖いけど大切な人」となっているそうです。

このようなプロセスを経て、「海のアトリエ」の制作には約5年かかったとのことでした。

編集者とのやりとりで堀川先生は自らが描きたいものだけでなく、多くの人が受け入れてくれる作品を作ることの重要性を理解したそうです。「海のアトリエ」は様々な賞を受賞しましたが、賞は単なる取得物ではなく、授かるものだと語っていただきました。


2「戦争について」

 

堀川先生の現在の作品テーマ「戦争」について、話がありました。

「現代においても、地球のどこかで戦争が続いています。日本は原爆を長崎と広島で経験した唯一の国です」と語り、映画「東京裁判」の話に移りました。この映画は太平洋戦争の軍事裁判を描いたドキュメンタリーであり、日本が戦後の道をどのように歩んできたかを理解するためにも、楽しい映画だけでなく、このような映画も観るべきであると学生たちに強くすすめました。また、堀川先生自身も、父親の戦争体験に触発されて、戦争中の実体験を絵にされました。

さらに、堀川先生は沖縄戦を体験した87歳の男性から聞いた話を元に絵を描こうと試みましたが、死体を描くことに抵抗がありました。初めは草で隠して描きましたが、「そうじゃない!」と指摘されてしまったそうです。しかし、男性とのディスカッションで「本当のものを見た人は絵が強かろうが関係ない!」と気づき、堀川先生は絵を完成させました。心に鞭を打たれたような気持ちになり、今後の絵を制作するにあたっての指針ができたと述べられました。


3「こころの栄養」

 絵を描くことだけでなく、こころの栄養となる「好きな言葉」も語っていただきました。

みうらじゅんの前向きな言葉「不安タスティック」や石川啄木の歌からは、他人と比較することへの警鐘が鳴らされ、短歌の魅力や心の慰めについても触れられました。また、島田修三やチャールズ・ダーウィンの言葉を通じて、変化や負けることの意義が語られ、「変わっていい」という考え方が大切であるとのメッセージが伝えられました。

 4「ティファニーで朝食を」

 「ティファニーで朝食を」を中心に映画の話をされました。

この映画では、主人公が自分自身の問題だけでなく人間関係で悩む姿が描かれています。主人公は田舎で獣医と結婚し、その後単身ニューヨークに移り住みますが、新たな恋人ができそうな中で、獣医が彼女を迎えに来ます。バスでのやりとりでは、「一緒に帰ろう」「ダメなの」と抱きしめる場面があります。この映画から得られる教訓として、嫌な人とは距離を置くことも大切ですが、離れたい人には抱きしめるような優しさを示すことが、より良い関係を築く手段であることが示唆されました。


5「非営利組織が持つ特性や表現する仕事の重要性」

最後に、非営利組織の特徴や仕事の重要性について話がありました。JBBY(日本国際児童図書評議会)の支援は、お金を稼ぐことよりも、社会や個人の健康や幸福に貢献することを重視しています。そのため、非営利組織との協力は共感と理解を促進するためにも重要です。アートや表現を通じて、メッセージがより深く浸透し、人々の心に訴えかけることができると述べられました。

また、他人の作品を解釈する際には、その解釈の深さや個性が重要だということも述べられました。自分なりの解釈で作品を楽しむことが、より意味深い経験をもたらし、表現の豊かさを引き出すことができるというメッセージが伝えられました。


 

講義終了後、学生からの質問から堀川先生は作家としての生き方について話されました。「何かを伝える使命がある」「誰かの役に立ちたい」という言葉を述べられました。その言葉により、今後の堀川先生の活動に、学生たちの関心が集まったことを感じさせられました。

堀川先生、愛情たっぷりのご講義、ありがとうございました。

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