令和7年7月7日というラッキーセブンが3つ揃ったこの日、群馬在住の画家、水野暁先生をお招きして、制作の現場や裏側、作品に対峙するスタンスをお話しいただきました。
当日は地元の先生のファンの方も訪れ、教室は先生のお話を楽しみにしていた様子です。
今回のご講義の大きなテーマを「見るというのはどういうことか」とし、
これまで先生が変化しつづける自然や動きを伴う人物を描く際に、
どのようなことを意識し、時間をかけて作品を作っていったのかをお話してくださいました。
これまでの展覧会で発表してきた作品のお話
先生が屋外で作品を描かれる様子をその過程も含めてお話してくれました。多くの作品は2~3年の歳月を経て完成しています。そこには移ろいゆく四季や表情を変える光など、
日々絵画に向き合って、変化していくモチーフを描くため、画面上に複数の痕跡が残っていることを教えてくれました。暑い中も寒い中も、実際に目で見て描くということを大切にしている先生ならではのモチーフのとらえ方かと思います。
4年間かけて浅間山を描いたお話では、画面上に雪、紅葉などどが描かれ、どの季節か一見わからないのですが、四季をまたいで山の見える場所に通い、その中で描いていったためこのような作品になっていたと聴講する側も合点がいきました。
そこではキャンバスを置かせてもらう場所の交渉から始まり、プレゼンテーションを経て、了承をもらい、通う中で、「この人は本気なんだ」と思ってもらうこととなったとお話されたときは、絵に向き合う熱い気持ちがひしひしと伝わってきました。そこでは、ご自身の絵も周りの人の支えがあってこそという感謝の気持ちも大切にされていました。
他にも大学時代のお話や、スペインへの留学の際のおはなし、そこで出会った友人や先生のおはなしもしてくださいました。どのエピソードもとても興味深いものでした。
絵の具がたくさん混じり合ったパレットも紹介してくれました
そして、「Mother」という先生のお母様を描いた作品について、
「母を描いたことがなかったので、描いてみようと思った」ということがきっかけとのことですが、ご病気のお母様を見続け、描くことで人って生きている、動いているということを改めて再確認されたようです。大変愛情深い気持ちが伝わる作品でした。
さらに中之条町と吾妻町の二本の杉の木の作品にも言及し、作品を見ただけではわからない、作者の言葉、意図などをくみ取ることが出来ました。
いずれのお話の中にも、「描く」ということは、「見る」ということは、
水野先生自身もそのことを模索しながら今もなお制作を続けてらっしゃるということがわかり、学生たちも県民の方も作家の言葉を聞くことで、また作品を異なった角度から見つめてみることに繋がったのではないでしょうか。
最後は質問タイム。実技を学ぶ学生からは、いろいろな質問が登場しました。
いずれの質問にたいしても丁寧に真摯に回答してくださいました。
今年の秋は以下の展覧会が同じ日にスタートします。ぜひ足をお運び下さい。
群馬県立近代美術館:特別展示「水野 暁 視覚の層|絵画の層(仮)」
2025年9月13日(土)から12月16日(火)
中之条ビエンナーレ 2025年9月13日(土)から10月13日(月・祝)