2025年7月11日金曜日

7月7日 「芸術の現場から」画家 水野暁先生

 令和7年7月7日というラッキーセブンが3つ揃ったこの日、群馬在住の画家、水野暁先生をお招きして、制作の現場や裏側、作品に対峙するスタンスをお話しいただきました。

当日は地元の先生のファンの方も訪れ、教室は先生のお話を楽しみにしていた様子です。


今回のご講義の大きなテーマを「見るというのはどういうことか」とし、
これまで先生が変化しつづける自然や動きを伴う人物を描く際に、
どのようなことを意識し、時間をかけて作品を作っていったのかをお話してくださいました。

これまでの展覧会で発表してきた作品のお話

先生が屋外で作品を描かれる様子をその過程も含めてお話してくれました。多くの作品は2~3年の歳月を経て完成しています。そこには移ろいゆく四季や表情を変える光など、
日々絵画に向き合って、変化していくモチーフを描くため、画面上に複数の痕跡が残っていることを教えてくれました。暑い中も寒い中も、実際に目で見て描くということを大切にしている先生ならではのモチーフのとらえ方かと思います。



4年間かけて浅間山を描いたお話では、画面上に雪、紅葉などどが描かれ、どの季節か一見わからないのですが、四季をまたいで山の見える場所に通い、その中で描いていったためこのような作品になっていたと聴講する側も合点がいきました。
そこではキャンバスを置かせてもらう場所の交渉から始まり、プレゼンテーションを経て、了承をもらい、通う中で、「この人は本気なんだ」と思ってもらうこととなったとお話されたときは、絵に向き合う熱い気持ちがひしひしと伝わってきました。そこでは、ご自身の絵も周りの人の支えがあってこそという感謝の気持ちも大切にされていました。

他にも大学時代のお話や、スペインへの留学の際のおはなし、そこで出会った友人や先生のおはなしもしてくださいました。どのエピソードもとても興味深いものでした。


絵の具がたくさん混じり合ったパレットも紹介してくれました

そして、「Mother」という先生のお母様を描いた作品について、
「母を描いたことがなかったので、描いてみようと思った」ということがきっかけとのことですが、ご病気のお母様を見続け、描くことで人って生きている、動いているということを改めて再確認されたようです。大変愛情深い気持ちが伝わる作品でした。

さらに中之条町と吾妻町の二本の杉の木の作品にも言及し、作品を見ただけではわからない、作者の言葉、意図などをくみ取ることが出来ました。

いずれのお話の中にも、「描く」ということは、「見る」ということは、
水野先生自身もそのことを模索しながら今もなお制作を続けてらっしゃるということがわかり、学生たちも県民の方も作家の言葉を聞くことで、また作品を異なった角度から見つめてみることに繋がったのではないでしょうか。


最後は質問タイム。実技を学ぶ学生からは、いろいろな質問が登場しました。
いずれの質問にたいしても丁寧に真摯に回答してくださいました。


水野先生、大変貴重なご講義、ありがとうございました!

今年の秋は以下の展覧会が同じ日にスタートします。ぜひ足をお運び下さい。

群馬県立近代美術館:特別展示「水野 暁 視覚の層|絵画の層(仮)」
           2025年9月13日(土)から12月16日(火)

中之条ビエンナーレ   2025年9月13日(土)から10月13日(月・祝)

2025年7月7日月曜日

6月23日「芸術の現場から」 チームラボ 森友香理先生

 6月23日、「芸術の現場から」ではチームラボの森友香理先生にお越しいただきました。




 森先生は、学生時代に舞踏などに関心を持ち、大学卒業後、出版業界などに勤務され、2011年よりチームラボのメンバーに。ご講義では、ご自身の略歴の後、チームラボの組織、現在に至るチームラボの活躍の歴史をご紹介いただきました。2012年台中での展覧会が最初の大規模な展示で、その後、ニューヨークなどで展覧会を開催し、2014年になって国内で大きな展覧会を実施できるようになったようです。現在では知らない人はいないと思われるチームラボですが、その黎明期には「アート」が評価されず、苦労したことがうかがえました。



 最新の活動例としてアブダビ・サディヤット島での美術館建設について取り上げていただきました。近隣には仏国・ルーブル美術館の分館「ルーブル・アブダビ」などが並び、チームラボの新しい美術館「teamLab Phenomena Abu Dhabi」とともに島全体が文化的な地区になっているそうです。一度は行ってみたい場所です。

 森先生が所属している「ソーシャルブランディング」チームのお仕事についてもご紹介いただきました。ソーシャルメディアをブランディングの中核ツールに据え、チームラボに入る前に行っていた「メディア」に会いにいく広報活動をやめたという森先生。その時は、マインドセットを変えることに苦労されたようです。

 現在では、全世界を対象に、誰もがチームラボの公式素材にアクセスできるようなり、どの国で展覧会を行ったとしても、等しくプレスキットを入手することができるそうです。プレスキットの素材となる写真や動画撮影の苦労話、モデルの衣装選びや展覧会名やそのロゴへのこだわりなど、現場の大変さを学生にも伝わるように、わかりやすくお話しいただきました。



 「アートによって人々の関係性をポジティブなものにする」というチームラボのコンセプトも、学生には新鮮に感じられたようです。確かに、チームラボのアート作品と鑑賞者が相互作用する展示空間は、鑑賞者が展示品を一方的に見る一般的なミュージアムとは異なる鑑賞体験を提供しています。21世紀の新しい鑑賞体験といえるものです。欧米と日本では、その展示空間での過ごし方が多少異なるという興味深い(面白い?)お話しも聞かせいただきました。聴講した学生はチームラボへの理解・関心が高まり、今後、身体全体で展示空間にかかわりながら、チームラボの作品と一体化するように鑑賞することでしょう。


 現在も海外や国内での新たなプロジェクトが進行中のチームラボ。これからも目が離せないですね。

 森先生、充実したご講義と数多くの学生の質問にお答えいただき、ありがとうございました。