2025年7月28日月曜日

7月21日「芸術の現場から」アーティスト長谷川仁先生

 2025721日、アーティスト・長谷川仁さんにお越しいただきました。

長谷川さんは、北海道から瀬戸内、海外まで幅広く活動されている現代美術家であり、

地域や子どもたちとの共同制作を数多く手がけています。

今回の講義では、ご自身の生い立ちから近年の作品まで、

多彩なエピソードを交えてお話しいただきました。

 

 幼少期と学びの原点

長谷川さんは、母がファッションデザイナー、父が建築家という家庭で育ち、

幼い頃から自宅の壁に自由に落書きを楽しめる環境があったそうです。

大学で社会学を学んだ後、タイでバックパッカーとして旅をした経験が大きな

転機となりました。旅先で出会った家庭の温かいもてなしや、質素な椅子に

心地よさを感じ、「自分にとっての居心地の良さとは何か」を考えるきっかけに

なったといいます。



帰国後は、昼間にプロダクトデザインのアルバイトをしながら、

夜間は桑沢デザイン研究所でプロダクトを学習。

倉俣史朗の作品に触れて受けた衝撃も、この時期に大きな刺激となりました。

さらにその後、モノ派のアーティスト・関根伸夫さんが主宰する事務所に7年間在籍し、

現場を通してアートの実践を学んでいきました。


 

「場所」と人をつなぐ作品づくり

長谷川さんの作品は「場所性」を大切にしています。現地に足を運び、その土地ならではの「色気」を見出し、地域に寄り添う作品を提案していく姿勢が一貫しています。

例として、以下のプロジェクトが紹介されました。

・《The cradle of stardust》安中榛名駅のベンチ:星座を描き、夜空を見上げる体験を提供するデザイン。



・《coinsJRタワーの募金箱:絶滅した動物には募金できない仕組みで、社会への問いかけを仕込んだ作品。



・《リスノタネ》小学校のワークショップ:子どもたちと泥人形をつくり、自然と遊びの関係を形にした試み。



・《エゾパズル》新千歳空港内に設置した北海道らしさを表現した立体アート。



 

子どもと共に創るアート

長谷川さんは、子どもとの共同制作やワークショップを積極的に展開してきました。

新聞紙を染めて巨大なインスタレーションを作ったり、廃校になった小学校で

「タイムマシン」をテーマに作品を制作したりするなど、

遊び心あふれる取り組みが印象的でした。



「子どもが自然を好きになるきっかけをつくりたい」

その言葉通り、作品には教育的なまなざしと社会的な意義が込められていました。

 

 

芸術祭と挑戦

長谷川さんは、大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭をはじめ、

各地の芸術祭にも多数参加されています。瀬戸内での《時間屋》では

46億年前の塩を10秒すくう」という行為を作品化し、

観客に地球の時間を感じさせました。



 

また、飯舘村での瓢箪を育て使った作品《ひょうたんボトル》や、



今年度制作したアップサイクルアート展での作品《指先みたいなもの》



など、自然・人間・社会をつなぐテーマが一貫していました。

 

 

メッセージ

最後に語られたのは「絶対に諦めない」「やり切る」という強い言葉。

そして、「芸術祭はアドベンチャー」という表現が印象的でした。

作品づくりはいつも“思いつき”から始まるが、そこに社会性と地域性を組み合わせ、

最後まで形にすることがアーティストの役割であると力強く語られました。

 

 

まとめ

今回の講義を通じて、学生たちは「アートは単なる自己表現ではなく、

人や場所をつなぐ行為である」ことを実感しました。

地域に根ざしたアートの力、そして挑戦し続ける姿勢に、

多くの刺激を受けた時間となりました。

長谷川様、ありがとうございました。

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