2025年12月8日月曜日

2025年度「西洋美術史実地研修2」第4回を実施しました

第4回(12月6日)は、東京駅周辺の美術館に行きました。

午前中はアーティゾン美術館を見学。
同美術館はブリヂストン美術館を前身として2020年に開館しました。西洋古代や近代の美術、また日本近代洋画のほか、現代美術までの幅広いコレクション作品を有しています。



見学にあたり、教育普及部学芸員の細矢芳氏が美術館の概要や開催中の展覧会について、またラーニングプログラムによる教育普及の活動や役割についてレクチャーをしてくださいました。

その後、展覧会「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」と「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 安井曾太郎」を鑑賞しました。


午後は三菱一号館美術館を見学。
同美術館は、1894年建設の洋風建築事務所を再現した建物で、19世紀末の西洋美術を中心としたコレクション作品を有しています。


まず、企画展「アール・デコとモード」を鑑賞しました。本年は1925年の「現代産業装飾芸術国際博覧会」(通称「アール・デコ博覧会」)から100年にあたり、博覧会のコンセプトと当時のファッションを関連づけた展覧会となっていました。
会場では、群馬県立館林美術館所蔵のフランソワ・ポンポン《シロクマ》たちとも出会えました。
その後、小企画展「フェリックス・ヴァロットン―親密な室内」の版画などを鑑賞しました。


今回の研修では、両美術館のスタッフの皆様に大変お世話になりました。
どうもありがとうございました。

2025年度「西洋美術史実地研修2」(学芸員課程科目「博物館実習Ⅰ」)は、今回の研修をもって無事に終了しました。(授業担当教員 藤沢桜子)



2025年11月22日土曜日

2025年度「西洋美術史実地研修2」第3回を実施しました

 第3回(11月15日)は、上野の国立西洋美術館を見学しました。

午前中は企画展「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」を鑑賞しました。印象派の作品というと、モネの《睡蓮》のように屋外のモティーフを思い浮かべがちですが、本展覧会では人物や静物など屋内のモティーフを描いた作品が多く集まっていました。

午後は常設展のほか、「フルーニング美術館・国立西洋美術館所蔵 フランドル聖人伝板絵―100年越しの“再会”」と「物語る黒線たち―デューラー「三大書物」の木版画」もあわせて鑑賞しました。





2025年11月7日金曜日

「ユリノ木物語」プロジェクト2025:芸術学専攻の院生たちが大学祭で本学歴史の展示を行いました

 「ユリノ木物語 群馬県立女子大学の歴史研究」プロジェクトは、本学の玉村校舎移転後40周年にあたる2022年に発足し、本学の教員、事務局職員、学生の協働作業を通じて、本学の歴史的な価値や魅力を再認識し、学内外へ発信する活動を行っています。ユリノキは、本学の開学記念樹です。

噴水彫刻のメンテナンス

今年2025年は、本学の開学45周年にあたり、11月1日~2日に開催された大学祭「錦野祭」では、芸術学専攻の院生プロジェクトメンバーが中心となって展示を行いました。



展覧会は「45 年目のユリノキをみんなとー大学とアートの繋がりー」と題し、本学の日常風景に溶け込むアートを本学の特徴の一つと捉えて紹介しました。


教室会場では、建築業協会賞を受賞した本学建物や、「円形広場」の噴水彫刻の写真、図書館の卒業生寄贈によるシルクスクリーン、また、作品保存のために現在は取り外されている「春の庭」の日時計といったアート作品などを展示しました。


参加型コーナーでは、葉の付箋紙にコメントを書いてユリノキの絵に貼ってもらい、開学記念樹の3本のうち失われてしまった1本をよみがえらせました。

今年はイメージキャラクターとして「ユリノキ犬」と「ユリノちゃん」が登場しました。

来場者にはパンフレットを配付し、大学の屋内外の美術作品に関する調査の経過報告も行いました。

パンフレット表紙

会場では院生たちがガイドをつとめ、大学祭の2日間で卒業生や地域の方々など、300人以上の方々にご来場いただきました。





2025年11月1日土曜日

2025年度「西洋美術史実地研修2」第2回を実施しました

 第2回(10月26日)は、近隣の群馬県立近代美術館を見学しました。

同美術館には、群馬ゆかりの美術や日本近代美術のほか、ルノワール、モネ、ピカソなどの海外近代美術、また現代美術のコレクション作品があります。

見学にあたり、教育普及係の黒田隆之氏が美術館や開催中の展覧会についてレクチャーをしてくださいました。

その後、企画展「響きあう絵画 宮城県美術館コレクション カンディンスキー、高橋由一から具体まで」と「水野暁 視覚の層 | 絵画の層」、また「コレクション展示:日本と西洋の近代美術Ⅲ」を鑑賞しました。

また、宮城県美術館学芸部長の加野恵子氏による講演「宮城県美術館コレクションで編む近代美術史―その魅力」を聴講し、2つの美術館の特徴や日本近代美術と西洋美術との関わりなどについてお話をうかがいました。

水野暁氏には、この7月に本学授業「芸術の現場から」のゲスト講師としてお越しいただき、ご自身の作品や制作についてご講義いただきました。

今回の研修では、黒田氏をはじめ、美術館のスタッフの方々に大変お世話になりました。
どうもありがとうございました。


2025年10月13日月曜日

2025年度「西洋美術史実地研修」が始まりました

「西洋美術史実地研修」は、美学美術史学科の専門教育科目であるとともに、学芸員課程科目の「博物館実習I」としても開講されています。本授業は、西洋美術の作品を実見して教室での学びを深め、美術館・博物館の展示や運営の実態を学ぶことを目的としています。

第1回(10月11日)の午前中は、SOMPO美術館(新宿)の「モーリス・ユトリロ展」を見学しました。


ユトリロ(1883-1955年)は、パリの街並みを詩情豊かに描いた風景画家です。展覧会は、彼の作品が制作時期ごとに章立てられた構成になっていたほか、会場には日本におけるユトリロの受容についてのコーナーもありました。

最後に美術館所蔵のフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890年)《ひまわり》を鑑賞して上野に向かいました。

午後は、東京都美術館の「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」を見学しました。

展覧会では、兄であるゴッホを支え、彼の死から半年後に死去した弟テオの遺族たち、テオの妻ヨーと彼らの息子フィンセントによる、ゴッホ作品の周知及び保存活動に焦点が当てられていました。会場では、1973年に開館したファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)のコレクションであるゴッホやその時代の画家たちの作品などが展示されていました。


2025年8月5日火曜日

7月28日「芸術の現場から」上田市立美術館館長 山嵜敦子先生

 2025年7月28日「芸術の現場から」のリレー講座最終回は、上田市立美術館館長の山嵜敦子先生にお越しいただきました。

山嵜先生は本学国文学科の卒業生です。
上田市役所に入庁し、国保年金課、文化財課、観光課などを経て、同市の池波正太郎真田太平記館、上田市立博物館、上田市立美術館の学芸員を務め、2021年に同美術館の館長に就任されました。

今回のご講義は「サントミューゼって、どんなところ?」というタイトルのもと、ご自身の経歴とともに3館の特色、学芸員の仕事についてお話をしてくださいました。

池波正太郎真田太平記館

池波正太郎真田太平記館は、直木賞作家・池波正太郎(1923-1990年)が戦国武将・真田昌幸とその息子たち信之、信繁(幸村)の活躍をテーマに執筆した時代小説『真田太平記』の関連資料を中心に展示している文学館です。昌幸が築城した上田城の城下町であった上田にあります。

上田市立博物館

上田城CG復元画像

上田市立博物館は、上田城跡にあり、歴代藩主や上田地方の資料を収蔵・展示しています。
上田城の全体像はVRの再現動画で見ることができます。建物自体は現存していないため、動画制作にあたり、古地図や絵図などの資料を参照しながら構築していったそうです。一瞬のあいだ登場する画像も、学芸員たちによる綿密な調査にもとづいています。

「真田三代の活躍した時代」展ポスター(部分)

また、2016年にNHK大河ドラマ『真田丸』関連の展覧会「真田三代の活躍した時代」を開催した際には、展示した肖像画について、大学時代に日本の服飾史を学んでいたことが作品の年代比定に役立ったそうです。

サントミューゼ(概要)

サントミューゼ(平面図)

山嵜先生が館長を務める上田市立美術館は、上田市交流文化芸術センター(劇場)と芝生広場と一体となった施設「サントミューゼ」を構成しています。「サント」には、SUN(太陽)と蚕都上田の2つの意味、また「ミューゼ」には美やミューズ(芸術の女神)、美術館といった意味が込められているそうです。
この施設は、文化芸術をとおして、上田市民のシビックプライド(都市に対する市民の誇り・愛着)や持続可能な自治体を形成していく交流拠点としての役割を担っているとのことです。

上田市立美術館展覧会事業(企画展)

上田市立美術館の企画展は、「顕彰作家に関する展覧会」「美術館を身近にするための展覧会」「質の高い美術展」「『育成』をキーワードとする美術展」「地域に根ざす芸術文化の紹介」の5つの目的別に開催されているそうです。

ミュシャ展、作品展示

山嵜先生が担当なさった企画展「アルフォンス・ミュシャ 煌めきの女神たち」をおもな例として挙げ、起案や予算、会場の詳細な展示計画、設営、開催中の管理やイベント開催、閉会後の報告書作成、決算など、展覧会の進め方に関わる学芸員の仕事を紹介してくださいました。

サントミューゼの様々な活動

サントミューゼでは、高崎市を本拠地とする群馬交響楽団の定期演奏会が年2回開催されているそうです。

山嵜先生は、上田市役所に入庁した当初から学芸員を目指していたわけではなかったそうです。大学時代に取得していた学芸員資格があったことで、やがて学芸員職に就くようになりました。しかし、資格のみではなく、現場での実践経験が大切であると力説なさいました。
また、「どの世代にも美術や芸術は大切であると思う。それに気づくことができたのは、市役所内の配属で健康保険関係の仕事に就いていた時に高齢者たちと直接関わる経験を得られたから。無駄なことは何一つありません」と若い学生たちに語りかけました。

これからの大学生活や就職活動、仕事のあり方について、先輩からの温かいメッセージが学生たちに伝わったのではないでしょうか。

山嵜先生、素敵なご講義をありがとうございました。

2025年7月28日月曜日

7月21日「芸術の現場から」アーティスト長谷川仁先生

 2025721日、アーティスト・長谷川仁さんにお越しいただきました。

長谷川さんは、北海道から瀬戸内、海外まで幅広く活動されている現代美術家であり、

地域や子どもたちとの共同制作を数多く手がけています。

今回の講義では、ご自身の生い立ちから近年の作品まで、

多彩なエピソードを交えてお話しいただきました。

 

 幼少期と学びの原点

長谷川さんは、母がファッションデザイナー、父が建築家という家庭で育ち、

幼い頃から自宅の壁に自由に落書きを楽しめる環境があったそうです。

大学で社会学を学んだ後、タイでバックパッカーとして旅をした経験が大きな

転機となりました。旅先で出会った家庭の温かいもてなしや、質素な椅子に

心地よさを感じ、「自分にとっての居心地の良さとは何か」を考えるきっかけに

なったといいます。



帰国後は、昼間にプロダクトデザインのアルバイトをしながら、

夜間は桑沢デザイン研究所でプロダクトを学習。

倉俣史朗の作品に触れて受けた衝撃も、この時期に大きな刺激となりました。

さらにその後、モノ派のアーティスト・関根伸夫さんが主宰する事務所に7年間在籍し、

現場を通してアートの実践を学んでいきました。


 

「場所」と人をつなぐ作品づくり

長谷川さんの作品は「場所性」を大切にしています。現地に足を運び、その土地ならではの「色気」を見出し、地域に寄り添う作品を提案していく姿勢が一貫しています。

例として、以下のプロジェクトが紹介されました。

・《The cradle of stardust》安中榛名駅のベンチ:星座を描き、夜空を見上げる体験を提供するデザイン。



・《coinsJRタワーの募金箱:絶滅した動物には募金できない仕組みで、社会への問いかけを仕込んだ作品。



・《リスノタネ》小学校のワークショップ:子どもたちと泥人形をつくり、自然と遊びの関係を形にした試み。



・《エゾパズル》新千歳空港内に設置した北海道らしさを表現した立体アート。



 

子どもと共に創るアート

長谷川さんは、子どもとの共同制作やワークショップを積極的に展開してきました。

新聞紙を染めて巨大なインスタレーションを作ったり、廃校になった小学校で

「タイムマシン」をテーマに作品を制作したりするなど、

遊び心あふれる取り組みが印象的でした。



「子どもが自然を好きになるきっかけをつくりたい」

その言葉通り、作品には教育的なまなざしと社会的な意義が込められていました。

 

 

芸術祭と挑戦

長谷川さんは、大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭をはじめ、

各地の芸術祭にも多数参加されています。瀬戸内での《時間屋》では

46億年前の塩を10秒すくう」という行為を作品化し、

観客に地球の時間を感じさせました。



 

また、飯舘村での瓢箪を育て使った作品《ひょうたんボトル》や、



今年度制作したアップサイクルアート展での作品《指先みたいなもの》



など、自然・人間・社会をつなぐテーマが一貫していました。

 

 

メッセージ

最後に語られたのは「絶対に諦めない」「やり切る」という強い言葉。

そして、「芸術祭はアドベンチャー」という表現が印象的でした。

作品づくりはいつも“思いつき”から始まるが、そこに社会性と地域性を組み合わせ、

最後まで形にすることがアーティストの役割であると力強く語られました。

 

 

まとめ

今回の講義を通じて、学生たちは「アートは単なる自己表現ではなく、

人や場所をつなぐ行為である」ことを実感しました。

地域に根ざしたアートの力、そして挑戦し続ける姿勢に、

多くの刺激を受けた時間となりました。

長谷川様、ありがとうございました。