2018年11月27日火曜日

「芸術の現場から」(県民公開授業) 能楽大小鼓方の大倉源次郎先生による御講義

リレー講座の第5回(2018.11.6)は、能楽大倉流小鼓方十六世宗家、大倉源次郎先生にお越しいただきました。
大倉源次郎先生は、現在の能楽を牽引する小鼓方であり、昨年には重要無形文化財(いわゆる人間国宝)にも認定されました。
世界各地を飛び回って国際的に活躍されている先生のご講義は、打楽器を通して文明の伝播を見渡す、スケールの大きな話題から始まりました。アフリカのトーキングドラムと能の小鼓がどちらも砂時計型の締太鼓(革を紐で張って胴に固定する太鼓)であること、同じ形のものがスリランカやオーストラリアにもあり、文明のつながりが垣間見られること。そして打面に馬の革を用いるのは朝鮮半島と同じだが、インドやインドネシアでは蛇の革を使用していること。太鼓は「世界中の色んな先人の叡智の賜物」という先生の言葉が印象に残ります。
馬革を鋼の輪に張り、桜の木で作られた胴に麻縄で固定します。新しい革は鳴る音が弱く、「5年、10年、30年と打ち続けて音を『育てる』」のだそうです。それゆえ実際の舞台で使われている小鼓は数百年前のものがザラであるとのこと。
続いて実際に小鼓の演奏を聞かせて頂きました。引き締まった革と声の響きの迫力で教室の空気まで澄み渡るように感じられました。その後、先生から受講者に「さて、どんな風に構えてましたか?」と問われます。何となく見てはいても、実際はほんの一部にしか注意が向いていないので、思い出せないものです。ただ見たり聞いたりするだけではなく、「芸術と語らう時間、体験する時間」が大事だと先生は話されていました。
続いて、左手を小鼓に見立て、「エア小鼓」を打ってみます。次に鳴らす一番いい音を自分の中でイメージする、音と音の間(ま)を取る(「コミを取る」)、お腹から力が湧いてくるように掛け声を出すなど、初心者にもわかりやすいご説明で、楽しく稽古を受けさせて頂きました。新しいことを学ぶ時にはとにかく師匠の言う通りにするのが大事、なぜなら「今までの常識を捨てて取り組むのが稽古」だから、と先生は話されていました。
最後に、能が江戸幕府の式学として日本中に広まり、統一言語を生み出したこと、またこの時代の能が「神・男・女・狂・鬼」の五つの演目を順に演じる「五番立」の形式を取り、これが人の現在・未来・過去とそれを救済する神や仏の姿を示すものであることなどを教えて頂きました。単に古いものだから受け継いでいくのではなく、「先人の叡智の賜物」としての価値を理解することが重要という先生のお話は心に響くものがありました。

大倉源次郎先生、ご講義をどうもありがとうございました。


大倉源次郎先生のウェブサイト http://www.hanatudumi.com/

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平成30年度「芸術の現場から」
10月~来年1月 火曜16:20~17:50 群馬県立女子大学 新館1階第1講義室にて
スケジュールはこちらをご覧ください。
https://www.gpwu.ac.jp/dep/lit/art/2017.html

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