2021年7月1日木曜日

2021年度「芸術の現場から」 6月21日(月) 光畑由佳先生によるご講義

6月21日の授業は、光畑由佳先生をお迎えして、「女性が自分らしく輝ける社会をめざして  授乳服メーカー「MO-HOUSE」の挑戦」と題して講義をしていただきました。
光畑先生は、お茶の水女子大学被服学科をご卒業後、ファッション、アート、音楽、演技など常に新しい文化を発信し続ける「PARCO」で、多くの美術関係のキュレーション、建築書の編集などを経験されました。
その後、オリジナルブランドの授乳服を中心に、衣服による環境づくりを提案するMO-HOUSE(以下、モーハウス)を設立。代表として働くかたわら、東京大学大学院情報学環・学際情報学府客員研究員や筑波大学大学院非常勤講師としてもご活躍です。政府関係や行政の有識者会議委員ほか、2014年、2016年に開催された「APEC女性と経済フォーラム」では日本代表の一人としてスピーカーを務められました。著書に『働くママが日本を救う!「子連れ出勤」という就業スタイル』があります。

講義の冒頭では、世界の中で見た日本の妊産婦死亡率、新生児死亡率の低さ、女性の幸福度、子供を持たない選択理由などを提示されました。

モーハウス起業のきっかけは、光畑先生ご自身が経験された「中央線事件」。
ご自身の子が生後1ヶ月のとき、外出時の電車の中でのことです。泣き出した娘がなかなか泣きやまず、周囲からの冷たい視線、迷惑そうな空気が車内に漂ったとき、「赤ちゃんを連れて出かけるだけで、なぜこんな思いをしなければいけないのだろうか」
「行政に頼るのではなく、この状況をどうにか自分で変えていきたい」
そう思ったそうです。

講義の中で光畑先生が、受講生を巻き込み、この「中央線事件」を赤ちゃんの人形を使って再現。



「徹底的に環境調整をすることで、身体内部の状態を良好にコントロールしていく、それが本来の看護ということである」

近代看護教育の母と呼ばれるナイチンゲールの言葉ですが、この言葉を信念に、いつでも、どこでも、快適な授乳環境が1枚の服から整えられるのではないか、そんな思いから起業したのが「モーハウス」です。モーハウスのモーは、motherのmoから、つまり母という意味が込められています。授乳=ミルク、ミルク=牛、牛からイメージするモーではないそうです。

地球、都市、住など大きな意味で使われることもある環境というキーワード、光畑先生の根っこにある被服という視点から、環境をデザインしていくことの重要性を繰り返し語られました。

後半は、モーハウスの働き方改革の1つである「子連れ出勤」について。
ここ数年、見られるようになった企業内託児所(社内もしくは近隣に設置された保育所)としてではなく、ある時はパソコンで作業をしながら授乳したり、オフィスの一角で赤ちゃんがお昼寝をしたり、多くのスタッフの中で育っていく、ハイハイから歩き始めるくらいの子どもたちを、当時の少子化対策担当大臣が来社された時の写真なども交えて紹介されました。

最後のスライドは、このオフィス環境の中で育った1人の子どもの写真でした。
そこには、歩き始めたくらいの小さな子が、自分の子供(キューピー人形?)を抱っこしながら、手にはノートと鉛筆を持っています。
子どのがいる環境で仕事をすることの意味を示した1枚。
この1枚の写真は、女性が自分らしく輝く社会づくりにつながっていくために社会を変えていく力を現わしているようです。

授業終了後の風景。
受講生は授乳服に興味津々、光畑先生の周りに集まった受講生から、多くの質問が投げかけられました。

受講生にとって近い将来への道しるべの1つとして、大変有意義なご講義になりました。

ありがとうございました。


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