2022年7月5日火曜日

5月30日「芸術の現場から」 日本舞踊家 花柳榮輔先生

530日の「芸術の現場から」は、日本舞踊家の花柳榮輔さんにお越しいただきました。東京と京都を拠点に、古典と創作の両方にまたがって精力的に活動しておられ、また男性の日本舞踊家からなる集団「弧の会」メンバーとしてもご活躍です。

日本舞踊のルーツは歌舞伎にあり、まず榮輔先生は歌舞伎の歴史をわかりやすくご説明くださいました。1603年頃に京都に出雲阿国が登場して独特の踊りで注目され、これを受けて遊女歌舞伎が流行すると、風紀を乱すとして幕府に禁じられ、次いで若い男性による若衆歌舞伎が登場すると、これも同様に禁じられます。そこで成人男性のみによる歌舞伎の形が考案され、それが今日まで連綿と受け継がれてきたのです。その過程で、歌舞伎の中の舞踊を役者でない市井の人々が習い、楽しむようになり、今日でいう「日本舞踊」という文化が発達してきたのです。

ところでこうした事情を背景に、歌舞伎では男性が女性を演じる「女形」という演技の様式が編み出されました。榮輔先生は、男性と女性をそれぞれ演じるための基本の姿勢を実演してくださり、受講生も実際に少し体験し、味わってみました。さらに少女から若い女性、老女までを巧みに演じ分ける技法を、映像を通して学びました。男性が演じるために誇張するからこそ醸し出される女性らしさ、という不思議な現象を、先生の解説とともに新鮮に見つめることができました。

また榮輔先生の所属する「弧の会」が2000年に発表した創作舞踊『御柱祭(おんばしら)』も映像でご紹介頂きました。この作品は長野の御柱祭を、群舞と照明、音楽で表現したもので、日本舞踊の創作としては珍しく再演を重ね、息の長い作品になっています。「日本舞踊」のイメージを大きく覆す迫力ある踊りに受講生は見入っていました。

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