2023年8月16日水曜日

2023年度「芸術の現場から」
齋藤千明先生によるご講義

7月31日は、齋藤千明先生にお越しいただきました。
齋藤先生は、アーティストであり、白鷗大学教育学部教授であり、鹿沼市立 川上澄生美術館 館長であり、花火師の資格を持ち、過去には花火を打ち上げる仕事にも携わっていました。

ご講義は、多くの肩書きを持っていること、学生時代やご卒業後の活動、ヘルメットをかぶって花火を打ち上げていたことなど、ユーモアを交えながら自己紹介からスタートしました。

二人展:「齋藤千明×佐藤智明カラスなぜ鳴くの」(静岡県・沼津市)2022年11月12日~12月4日

齋藤先生は、国内外で多くの展覧会を経験されています。
2022年に静岡県の沼津市で開催された二人展:「齋藤千明×佐藤智明カラスなぜ鳴くの」に関して、スライドや映像をもとに木版で制作された作品のコンセプト、インスタレーション作品として場とどう関わるのかなどを、制作の過程で起きたハプニングも含め、説明されました。

そもそもなぜ木版で作品を制作し、表現することになったのか?

1枚の浮世絵の作品、喜多川歌麿作「高島おひさ」との出会いが、きっかけになったことや、浮世絵が持つかろやかさの魅力などを話されました。

浮世絵版画は、版元、絵師、彫師、摺師などの分業制です。それに対して齋藤先生の作品は、創作版画の位置付けであり自刻自摺りになります。
版木を彫る、紙に摺る過程などで経験する感触なども大切にしているとのこと。

大学の卒業制作からもよくわかります。台東区の買上作品となり、先日も東京藝術大学美術館での展覧会で、展示もされていたそうです。
この作品は、なんと桜の木1本を使い制作されました。チェンソーで木を切った断面、小口がモチーフとして摺られています。また浮世絵の技法研究を取り入れ制作された作品も紹介していただきました。

卒業制作『知覚の形状』

卒業制作『塊』伝統木版画の技法研究

美学の複数の先生も参加されている伊香保温泉で開催された「床の間アート」展にも参加されています。
この他にも、額に入った平面作品というイメージが強い版画作品を太鼓にして演奏家とのコラボレーションをしたり、立体作品も制作されています。

シリーズ『透過する場』 伊香保温泉での床の間アート展より

立体作品:和紙で作られたコルセットにミョウバンの結晶

次に、館長をされている川上澄生美術館のお話へ。
美術館主催の木版画の公募展で大賞を取ったことをきっかけに、20年近く展覧会、ワークショップなどをとおして関わってきた事が、館長へとつながったようです。

現在、美学美術史学科の卒業生である臼井佐知子さんが、学芸員で活躍されています。
川上澄生作品のスペシャリストです。
インタヴュー映像では、学芸員のお仕事、県女時代のこと、学芸員になるきっかけなど。履修生の中には、学芸員の資格修得を目指している学生もいます、大変参考になったようです。

美学卒業生の学芸員、臼井佐知子さん

これからの美術館のあり方、伝え方などを学芸員と検討し始めています。
その1つとして、美術館に来てもらうだけではなく、こちらから出向く出前ワークショップなどを試みているとのこと。
図書館と連携した造形活動もその1つ、図書館にある本を活用しながら、ブックマーク(しおり)を制作することを提案され実践されています。

最後に、お持ちいただいた作品やご講義の中でも話された版木、版画制作には欠かせない本式のバレンを見せていただきました。

講義終了後の学生と!

福島ビエンナーレ「風月の芸術祭 in 白河2022」

『地水火風空』福島ビエンナーレアートだるま作品

履修生には、沼津の作品や福島ビエンナーレでのだるま作品を中心に話されたインスタレーションという表現方法、作品を制作したら終わりではなく、展示する場や関係する人とのコミュニケーションの大切さを、強く感じる講義になったようです。

齋藤先生、素敵なご講義をありがとうございました。

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