第2回(10月26日)は、近隣の群馬県立近代美術館を見学しました。
同美術館には、群馬ゆかりの美術や日本近代美術のほか、ルノワール、モネ、ピカソなどの海外近代美術、また現代美術のコレクション作品があります。
見学にあたり、教育普及係の黒田隆之氏が美術館や開催中の展覧会についてレクチャーをしてくださいました。
美学美術史学科では、美学、日本美術史、西洋美術史、美術実技、アートマネジメントの各分野を学ぶことができます。このブログとX(https://x.com/aesth1)では、学科の活動の最新ニュースを紹介しています。学科のより詳しい紹介は、本学HPの学科案内をご覧ください。 https://www.gpwu.ac.jp/dep-pos/dep/lit/art/index.html
第2回(10月26日)は、近隣の群馬県立近代美術館を見学しました。
同美術館には、群馬ゆかりの美術や日本近代美術のほか、ルノワール、モネ、ピカソなどの海外近代美術、また現代美術のコレクション作品があります。
見学にあたり、教育普及係の黒田隆之氏が美術館や開催中の展覧会についてレクチャーをしてくださいました。
「西洋美術史実地研修」は、美学美術史学科の専門教育科目であるとともに、学芸員課程科目の「博物館実習I」としても開講されています。本授業は、西洋美術の作品を実見して教室での学びを深め、美術館・博物館の展示や運営の実態を学ぶことを目的としています。
第1回(10月11日)の午前中は、SOMPO美術館(新宿)の「モーリス・ユトリロ展」を見学しました。
ユトリロ(1883-1955年)は、パリの街並みを詩情豊かに描いた風景画家です。展覧会は、彼の作品が制作時期ごとに章立てられた構成になっていたほか、会場には日本におけるユトリロの受容についてのコーナーもありました。
最後に美術館所蔵のフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890年)《ひまわり》を鑑賞して上野に向かいました。
午後は、東京都美術館の「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」を見学しました。
展覧会では、兄であるゴッホを支え、彼の死から半年後に死去した弟テオの遺族たち、テオの妻ヨーと彼らの息子フィンセントによる、ゴッホ作品の周知及び保存活動に焦点が当てられていました。会場では、1973年に開館したファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)のコレクションであるゴッホやその時代の画家たちの作品などが展示されていました。
2025年7月28日「芸術の現場から」のリレー講座最終回は、上田市立美術館館長の山嵜敦子先生にお越しいただきました。
山嵜先生は本学国文学科の卒業生です。
上田市役所に入庁し、国保年金課、文化財課、観光課などを経て、同市の池波正太郎真田太平記館、上田市立博物館、上田市立美術館の学芸員を務め、2021年に同美術館の館長に就任されました。
今回のご講義は「サントミューゼって、どんなところ?」というタイトルのもと、ご自身の経歴とともに3館の特色、学芸員の仕事についてお話をしてくださいました。
| 池波正太郎真田太平記館 |
| 上田市立博物館 |
| 上田城CG復元画像 |
| 「真田三代の活躍した時代」展ポスター(部分) |
| サントミューゼ(概要) |
| サントミューゼ(平面図) |
| 上田市立美術館展覧会事業(企画展) |
| ミュシャ展、作品展示 |
2025年7月21日、アーティスト・長谷川仁さんにお越しいただきました。
長谷川さんは、北海道から瀬戸内、海外まで幅広く活動されている現代美術家であり、
地域や子どもたちとの共同制作を数多く手がけています。
今回の講義では、ご自身の生い立ちから近年の作品まで、
多彩なエピソードを交えてお話しいただきました。
長谷川さんは、母がファッションデザイナー、父が建築家という家庭で育ち、
幼い頃から自宅の壁に自由に落書きを楽しめる環境があったそうです。
大学で社会学を学んだ後、タイでバックパッカーとして旅をした経験が大きな
転機となりました。旅先で出会った家庭の温かいもてなしや、質素な椅子に
心地よさを感じ、「自分にとっての居心地の良さとは何か」を考えるきっかけに
なったといいます。
帰国後は、昼間にプロダクトデザインのアルバイトをしながら、
夜間は桑沢デザイン研究所でプロダクトを学習。
倉俣史朗の作品に触れて受けた衝撃も、この時期に大きな刺激となりました。
さらにその後、モノ派のアーティスト・関根伸夫さんが主宰する事務所に7年間在籍し、
現場を通してアートの実践を学んでいきました。
「場所」と人をつなぐ作品づくり
長谷川さんの作品は「場所性」を大切にしています。現地に足を運び、その土地ならではの「色気」を見出し、地域に寄り添う作品を提案していく姿勢が一貫しています。
例として、以下のプロジェクトが紹介されました。
・《The cradle of stardust》安中榛名駅のベンチ:星座を描き、夜空を見上げる体験を提供するデザイン。
・《coins》JRタワーの募金箱:絶滅した動物には募金できない仕組みで、社会への問いかけを仕込んだ作品。
・《リスノタネ》小学校のワークショップ:子どもたちと泥人形をつくり、自然と遊びの関係を形にした試み。
・《エゾパズル》新千歳空港内に設置した北海道らしさを表現した立体アート。
子どもと共に創るアート
長谷川さんは、子どもとの共同制作やワークショップを積極的に展開してきました。
新聞紙を染めて巨大なインスタレーションを作ったり、廃校になった小学校で
「タイムマシン」をテーマに作品を制作したりするなど、
遊び心あふれる取り組みが印象的でした。
「子どもが自然を好きになるきっかけをつくりたい」
その言葉通り、作品には教育的なまなざしと社会的な意義が込められていました。
芸術祭と挑戦
長谷川さんは、大地の芸術祭や瀬戸内国際芸術祭をはじめ、
各地の芸術祭にも多数参加されています。瀬戸内での《時間屋》では
「46億年前の塩を10秒すくう」という行為を作品化し、
観客に“地球の時間”を感じさせました。
また、飯舘村での瓢箪を育て使った作品《ひょうたんボトル》や、
今年度制作したアップサイクルアート展での作品《指先みたいなもの》
など、自然・人間・社会をつなぐテーマが一貫していました。
メッセージ
最後に語られたのは「絶対に諦めない」「やり切る」という強い言葉。
そして、「芸術祭はアドベンチャー」という表現が印象的でした。
作品づくりはいつも“思いつき”から始まるが、そこに社会性と地域性を組み合わせ、
最後まで形にすることがアーティストの役割であると力強く語られました。
まとめ
今回の講義を通じて、学生たちは「アートは単なる自己表現ではなく、
人や場所をつなぐ行為である」ことを実感しました。
地域に根ざしたアートの力、そして挑戦し続ける姿勢に、
多くの刺激を受けた時間となりました。
長谷川様、ありがとうございました。
2025年7⽉14⽇、群⾺県⽴⼥⼦⼤学にて、メディアプロデューサー・アートディレクターとして活躍する中⾕⽇出(なかや・ひで)先⽣による講義が⾏われました。
講義の冒頭、先⽣は「本⽇出会った学⽣のみなさまと、これからつながっていきましょう!」と語りかけ、90分にわたって、⽣成AI時代における⼈間の学び・創造・つながりについて多⾓的に展開されました。キーワードは「アンラーンnlearn)=既存の考えを⼿放す」。情報社会、デザイン教育、アートの役割などを縦横無尽に語る内容でした。
令和7年7月7日というラッキーセブンが3つ揃ったこの日、群馬在住の画家、水野暁先生をお招きして、制作の現場や裏側、作品に対峙するスタンスをお話しいただきました。
当日は地元の先生のファンの方も訪れ、教室は先生のお話を楽しみにしていた様子です。
6月23日、「芸術の現場から」ではチームラボの森友香理先生にお越しいただきました。
森先生は、学生時代に舞踏などに関心を持ち、大学卒業後、出版業界などに勤務され、2011年よりチームラボのメンバーに。ご講義では、ご自身の略歴の後、チームラボの組織、現在に至るチームラボの活躍の歴史をご紹介いただきました。2012年台中での展覧会が最初の大規模な展示で、その後、ニューヨークなどで展覧会を開催し、2014年になって国内で大きな展覧会を実施できるようになったようです。現在では知らない人はいないと思われるチームラボですが、その黎明期には「アート」が評価されず、苦労したことがうかがえました。
最新の活動例としてアブダビ・サディヤット島での美術館建設について取り上げていただきました。近隣には仏国・ルーブル美術館の分館「ルーブル・アブダビ」などが並び、チームラボの新しい美術館「teamLab Phenomena Abu Dhabi」とともに島全体が文化的な地区になっているそうです。一度は行ってみたい場所です。
森先生が所属している「ソーシャルブランディング」チームのお仕事についてもご紹介いただきました。ソーシャルメディアをブランディングの中核ツールに据え、チームラボに入る前に行っていた「メディア」に会いにいく広報活動をやめたという森先生。その時は、マインドセットを変えることに苦労されたようです。
現在では、全世界を対象に、誰もがチームラボの公式素材にアクセスできるようなり、どの国で展覧会を行ったとしても、等しくプレスキットを入手することができるそうです。プレスキットの素材となる写真や動画撮影の苦労話、モデルの衣装選びや展覧会名やそのロゴへのこだわりなど、現場の大変さを学生にも伝わるように、わかりやすくお話しいただきました。
「アートによって人々の関係性をポジティブなものにする」というチームラボのコンセプトも、学生には新鮮に感じられたようです。確かに、チームラボのアート作品と鑑賞者が相互作用する展示空間は、鑑賞者が展示品を一方的に見る一般的なミュージアムとは異なる鑑賞体験を提供しています。21世紀の新しい鑑賞体験といえるものです。欧米と日本では、その展示空間での過ごし方が多少異なるという興味深い(面白い?)お話しも聞かせいただきました。聴講した学生はチームラボへの理解・関心が高まり、今後、身体全体で展示空間にかかわりながら、チームラボの作品と一体化するように鑑賞することでしょう。
現在も海外や国内での新たなプロジェクトが進行中のチームラボ。これからも目が離せないですね。
森先生、充実したご講義と数多くの学生の質問にお答えいただき、ありがとうございました。
6月16日、「芸術の現場から」では日本通運(株)関東美術品支店の大木康代先生にお越しいただきました。
大木先生は大学卒業後、日本通運に勤められ、美術品輸送に30年以上携わられています。
ご講義は、大木先生が関わった美術展の紹介にはじまり、美術館やマスメディアなどから仕事を受注していること、「日本の美術品輸送の歴史は、まさに日本通運の美術品輸送の歴史」ということをお教えいただきました。1951年、サンフランシスコのデ・ヤング記念博物館での「講和記念サンフランシスコ日本古美術展」から日本通運の美術品輸送がはじまり、1964年には《ミロのヴィーナス》を運び、その折には時速30km程度で車を走行させたということでした。現代では考えにくい輸送方法で、きっと当時の注目を集めた美術品輸送だったのでしょう。とても興味深いお話しでした。
大木先生は美術品の取り扱いについて「美術品を、赤ちゃんを抱くように持つ」と表現され、学生たちは、そのイメージしやすい言葉に感銘を受けた様子でした。
その他、海外での美術品輸送、航空機やトラックでの輸送などについて、具体的な事例をご紹介くださいました。国内輸送と海外輸送のちがい、海外輸送の煩雑な手続き、美術品専用車の仕様、作品を輸送する時の温湿度や振動への配慮などは、展覧会を鑑賞しているだけではイメージできない、まさに「裏方」の仕事。学生たちは美術品輸送の大変さと重要性を知り、今後の展覧会鑑賞に新たな視点が加わったことでしょう。
最後に、昨今、美術品輸送におけるSDGsの取り組み、リユースの箱などについてお教えいただきました。時代に合わせて美術品輸送も進化していることを知り、今後の展覧会活動について考えさせられる良いご講義でした。
大木先生、ありがとうございました。
今回の「芸術の現場から」は、ゲスト講師としてサントリー美術館学芸員の内田 洸先生をお招きしました。


内田先生は、2012年早稲田大学大学院文学研究科美術史学コース修士課程を修了され、博士後期課程在学中に、秋田県立近代美術館の学芸員公募に応募され、学芸員になられました。
ご講義は、本学との縁を繋いだサントリーの説明から始まりました。
1899年、鳥井信治郎氏が創業、およそ60年後の1961年に佐治敬三氏の社長時代に、サントリー美術館が東京都千代田区の丸の内パレスビル内で開館。多くの美術館は、収蔵品を見せるために建設され、開館するそうですが、収蔵作品数「0」から始め、関係者を驚かせたそうです!!
2007年に六本木の東京ミッドタウンに移転。設計は、世界的に有名な隈研吾氏。
学生時代、考古学にも興味があり、選択を迷われたそうですが、日本美術の江戸絵画を専攻されました。学生時代、学内にある博物館でのアルバイトやゼミ活動として、絵画作品の調査や江戸時代の絵師のお墓巡り(苔掃)などもされたそうです。


次にサントリー美術館の概要へ。
日本全国の博物館数は令和三年度の報告では約5700館あり、そのうち美術・歴史を中心としたものが4400館ほど、この中で東京には約200館もあるそうです。国宝や重要文化財を多く収蔵し、外国人にも人気がある根津美術館や茶道具や刀剣などを収蔵する三井記念美術館などを説明されました。
そしてサントリー美術館の紹介に。
「生活の中の美」を美術館の基本理念とし、「美を結ぶ。美をひらく。」をミッドタウン移転後のミュージアムメッセージとしたそうです。


収蔵作品の紹介では、伝承として北条政子が所有していたとされる漆の器やガラス作品も多く、特にエミール・ガレのコレクション数は国内でも有数だそうです。
「都市の〈居間〉」が館内のコンセプト。サントリーをもじった玄鳥庵という茶室が館内にあります。

続いて、学芸員の業務について、詳しく話していただきました。資料の収集から、保管、展示、教育普及、運営・管理、照明器具LEDへの移行やショップで販売されるグッズ制作との連携など、大変多くの業務があるそうです。
特に展示について、展覧会が公開され、終了するまでの流れを説明していただきました。企画立案から始まり予算策定、出品交渉、広報、図録作成、造作・図面作成、展示設営、展示、開幕、イベント、閉幕、撤収、返却などなど。理想的には、約3年前からスタートできればいいそうです。
企画の内容として、収蔵品を中心にしたコレクション展か国内外の様々な美術館や個人からお借りする企画展かで、業務の内容も大きく異なるそうです。また自主企画か数カ所を巡回するか、マスメディアなどが企画に関わるかで、予算策定も大きく変わってくるそうです。

ここで出品交渉や調査の逸話を紹介していただきました。
上の画像は、巡回企画として関わったミネアポリス美術館を訪ねたときのものです。
国内の例として、お寺が所蔵される仏像や襖絵は、まだ現役で使用されていることがあり、簡単には展覧会に出品できないことや、調査や新規撮影を夏のお寺で行った際、汗が文化財に飛ばないよう、額にしっかりタオルを巻いたエピソードも語っていただきました。
何回も校正する図録制作では、フリクションが必須。研究の成果で記載内容が修正されることや、誤字脱字のチェックとフル回転、時にフリクションのインクや消しゴムを変えることもあるそうです。
大切な作品の運搬前にはコンディションレポート(調書)の作成が必要になります。どこが傷んでいるのか、どの箇所に気をつけなければいけないのかなど。運搬時は何かあったときに対応できるように、ずっと同行されるそうです。九州で作品をお借りした場合は、東京までなんと2日間も。
作品を展示する上で、照明効果はとても重要。外部に委託する美術館もあれば自分たちで行う美術館もあるそうです。

最後に今後、サントリー美術館で開催され、内田先生が関わっている「絵金」の展覧会について、紹介されました。高知県「土佐赤岡祭り」で使用される芝居絵などが中心になるようですが、履修生の手元に配られたチラシは、片面印刷の先行チラシ。これから本チラシと呼ばれる両面印刷へと制作が進んでいくとのこと。今まで芸術作品として、美術館で取り上げられることが少なかった「絵金」にスポットを当てた画期的な展覧会。実際のお祭りで見られるように、暗い空間の中に屏風を設置し、行燈の光で照らされた雰囲気を再現する試みなど、大掛かりなものになるようです。
あまり聞く機会がなかった多岐にわたる学芸員業務など、貴重な経験を交えたご講義でした。
内田先生、ありがとうございました。
第三回目のゲストとして、アーツ前橋特別館長、森美術館特別顧問、十和田市現代美術館総合アドバイザー、弘前れんが倉庫美術館特別館長補など多数のお仕事を兼任されている南條史生先生にご講義をいただきました。
先生には、2016年に一度本学にお越しいただき、その際も世界のアート、とりわけアジアの現在について、お話を伺いました。今回、本学学長からも何度もオファーし、大変お忙しい中二度目のご講義をいただくことが叶いました!ご縁があり、群馬県前橋市の「アーツ前橋」の特別館長というお立場になられたので、是非ともお話を伺いたいと思っていました。